PECHEDENFERのブログ

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FFP:脱アライアンスと自社会員優遇の傾向(その2)

 

UALufthansa と共にスターアライアンス創始者です。UA はその FFP、MileagePlus に金額制を導入、結果的にスターアライアンス提携各社との間に壁を作り、自社利用優遇、アライアンス排除に傾きました。同じ頃 Lufthansa は Miles & More 拡大と新加盟会社の底上げに熱心だったという見方もできるかもしれません。中欧での市場寡占を果たし、いよいよ自社 (とその一味) の会員優遇へ舵を切りました。

 他のアライアンスに目を向けると、ワンワールドでも動きがあります。

BA、AY と Avios 一家

マイルの代わりに Avios を採用する会社が増えています。導入したのは BA ですが、今では IB, EI, QR, AY, VY 5社の FFP 通貨として機能します。この 5社はそれぞれ独自の FFP を持っており、特典マイルの代わりに Avios を利用します。私見ですが、Lufthansa と異なり FFP 統合はやる気がないようにも見えます。ただしこれらの会社の関係は複雑で、FFP に関係する分類だけでも

・IAG 傘下 (同一経営):BA, IB, VY, EI

ワンワールド加盟会社:BA, IB, QR, AY

FFP 間で Avios を移動可能:BA, IB, QR, EI

と3つぐらいすぐに思いつきます。英連邦、英連邦王国、連合王国イングランドといろいろな集団を作り出すのがアングロサクソン流だとすれば、この多様な分類の共存もその流儀に沿っています。

 

さて BA は AA と共にワンワールド創始者、盟主です。共通化推進の旗振り役だったはずですが、ここにきてブロック化と脱共通化を進めています。象徴的な出来事が、Aviosで予約できる特典航空券の規定数を公表、他の提携各社 FFP 会員へはこの席を提供しないとの宣言です。

BA エグゼクティブクラブ遠隔利用 tips (3) - PECHEDENFERのブログ

ごく一般的に言って、FFP では特典航空券の詳細はほとんど公表されません。自社会員専用に特典枠を設けることは普通ですが、数はおろかその事実すら公表されません。BA の場合、規定数を明らかにして他社排除を宣言した意義が大きいのです。Avios 一家の結びつきを強化して、ワンワールドとは距離を置くことを創始者・盟主が表明したのです。

 

ワンワールドは 1999 年に結成され、同年のうちに IB、AY、EI は加盟しています。QR は2012年加盟、EI は 2007年に脱退しました。IB はパンデミック前から Avios 利用していますが、QR や AY はそれ以後です。AY も Avios 会員にのみ特典航空券を規定数供給することを発表しています。今後は Avios 一家内で共通化は拡大し、他のワンワールド各社からは距離を置くことになることでしょう。

 

特典マイルを Avios として共通化するなら、航空連合の成立時のマイルと同じ方向の動きです。航空会社が世界中どこにあっても参加できる可能性があります。中欧を Miles & More 一色に塗り潰そうとする Lufthansa とは異なる戦略です。

 

客としての立場では、非 Avios FFP から BA, IB, QR, AY の特典航空券は縁遠くなります。しかしそれ以上の盟主自ら宣言した脱共通化、脱アライアンスのインパクトが大きいと思います。ワンワールド全体で特典航空券の相互提供が冷え込むことは避けられません。

JAL の Life Status Program

露骨な Lufthansa や BA とは対照的に JAL は巧妙なことを行っています。それは今年 1月に始まった Life Status プログラム。特典をチェックすると気づきますが、グローバルクラブにワンワールドサファイア資格があること以外、自社で完結する特典ばかりです。これはワンワールドの枠にはまった JAL Mileage Bank と大きく異なる点です。

 Life Status が Mileage Bank と並列共存する別プログラムであることは繰り返し強調されています。前者は航空輸送以外に事業拡大を図ると共に、ワンワールドからのデカップリングという目的がありそうです。控えめに言ってもデカップリングへの準備です。

 

去年まで亀タグはグローバルクラブのオマケでしたが、Life Status プログラムは JAL Mileage Bank に並ぶ内容を持ちます。そして JAL が後者から前者に顧客の活動を誘導することは可能です。昨年まで恒例だった FOP 2倍キャンペーンを行わないだけでも違います。JAL を利用する限り、☆☆☆☆☆☆会員は JMB ダイヤモンド会員より特典は多いのです。会員も冷静に判断するようになりましょう。

 

私は数年の後、JAL 創立80年などとキリの良い年に JAL Life Status Programme 全体が伝統ある JAL グローバルクラブの名称に変わることを願います。

 

旧グローバルクラブの延長で発想し、Life Status プログラムでワンワールドエメラルド会員資格を期待する会員も多かったようですが、恐らくこれは JAL の方針と真逆の発想です。もともと JAL はアライアンス内共通化に慎重。JGC も当初ワンワールド Ruby でした。そして Mileage Bank で会員ステイタスを保つための搭乗は、半分が自社利用でなくてはなりません。Miles & More が2024年に始めたばかりのことをアライアンス加盟時からずっと行っているのです。Life Status は今後拡充が期待され、Mileage Bank は放置しても自社会員優遇、脱アライアンスは加速します

 

JV としての囲い込み

FFP 全体に影響するわけではありませんが、JV をベースにする会員特典の共通化も目立ちます。例えばワンワールドでは大西洋 JV でこれを進めています。JFK のターミナル 8 はすでに BA は引越しが完了していて、AA 上位会員の特別サービスは BA 会員にも提供されます。

BAは JFK ターミナル 8 を使用開始 - PECHEDENFERのブログ

LHR 側でも AA が BA のターミナルに引越す旨のアナウンスはありましたが、こちらは遅れているようです。

 

通化が JV に限定されるので、脱アライアンスほどではありませんが、アライアンスの顔色を伺うことが一切ない点に注意が必要です。