PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

QR39:DOH-CDG ファースト(その3)

機内食のことを忘れていました。

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テーブルは当たり前ですが、巨大。

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朝食なので、奇をてらった選択はありません。無難なスモークサーモンとインド料理を選びます。「インド料理が無難」という言い回しは、前世紀では自己撞着、今世紀では法則の一種。現代ではインド系が労働者として世界中に分布、それぞれがインド各地から食文化を持ち込んでいます。そして現地化して角がとれています。中華料理、イタリア料理に続く世界料理です。

ただしスパイスは大丈夫かと訊かれました。QRはまだ英国人の客が多いようです。

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この朝食、平凡に見えます。しかし右上のグラスは、Château d'Yquemです。朝からYquemという、デカタン。地上に降りたらその足で教会に駆けつけ、”Mon Père, je dois vous faire une confession. J'ai commis un énorme péché...”と告解するレベルです。足を下ろすのは、チョコの消費がpéchésの国ですから。

 ワインリストで見つけた時は、「なんでこんなものを積んでいるんだ」と目を疑いましたね。Château d'Yquem 2008。demi-bouteille(375 ml)というエコノミーな買い付けでしたが、ファーストクラスの「仕掛け」としては抜群です。

 以前、「熟成したChâteau d'Yquem をファーストクラスに」と叫びましたが、もちろんQRのこのYquemは若すぎです。

機内用に採用して欲しいワイン(3) - バス代わりの飛行機

そこに書いたとおり、熟成すると世界観が違うほど差が出ますが、ワインが若い頃の味わいを記憶すると、熟成のピークで再度出会った時に、何ともいえない感慨を呼び起こします。これが「偉大な」Bordeauxの強みで、他に真似のできない部分です。また人の方でも、20代からいろいろな「高級」ワインを知ることが大切な理由でもあります。潜在的に偉大なワインの若飲みは、それだけでは大した体験にはなりませんが、後年の再会を考えると必要なのかなとも最近思うようになりました。QRのおかげで、20年後に2008を開ける口実ができました。貴腐香はほとんど感じられなかったし、ストラクチャーもそんなにがっちりしていなかったので、そんなに待たなくても良いワインでしょう。Parisで750 mLのボトルの市価を見たら、300 EURでした。やはり評価は低いようです。

 

他の2人の搭乗客はイスラム教徒なので、Comtes de ChampagneもYquemも私のためだけに開けることになったはず。さすがにボトルを空にするほど、飲みません。CDG発DOH行の便でも使えるから良しとしましょう。Yquemは空気に触れて、良くなっているでしょう。

 

一応メインも

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お上品なインド料理でした。私はこの皿には満足です。ワインも正解。泡よりは合うと言って良いでしょう。

 Sauternesの人たちは、「貴腐ワインはどんな食事にも合う」と言います。そういう発言をワイン評論家は無茶呼ばわりして否定するのですが、私は彼らに同意します。ワインの消費は、英米の味覚を中心に形成された「辛口こそが食事に合う」いう常識にとらわれすぎ。「英米人の味覚がものさしでは、あてにならない。」と考えた方が健全です。アメリカ、イギリスの食文化のひどさや、そこから自由になれない英米のワイン評論家の嗜好の低俗さを皮肉っているのではなくて、味覚の多様性が大切という認識です。

 

他のワインは、

Billecart-Salmon, Brut Rosé

Pierre Janny, Puligny-Montrachet, Miroy 2012

Château Léoville Poyferré 2008

Mantlerhof, Mosburgerin Reserve 1er Cru 2011, Grüner Veltliner

などです。Poyferréは少し気になりましたが、朝からMédocはありえません。Pulignyの白をスモークサーモンに合わせるのも仰々しいし、やはり出番は無いと再度納得。

 

最後はエスプレッソで〆。

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キャビン逆側の女性二人はアラブ人だから、寝ているはず。一方、私は寝そうにありません。こういう場合、キャビンの光量の関係からもクルーは気を使います。そういうことで、朝食が済んでしばらくすると、私の担当がやって来て、プレミアムラウンジの紹介を受けます。シートに座っているのも退屈なので、行くことにしました。アテンドされながら機内を移動します。

 

ビジネスクラス後方のPremium Lounge。写真を撮らなかったのはやせ我慢。

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QRのサイトからコピーします。

 

2時間以上過ごしました。客は2人で、豪州在住で帰宅中のパリ人と、Avios消化で放浪中のわたくし。相手をした乗務員は、フィリピン人、ナイジェリア人、インド人と時々交代が入りましたが、ほとんどLisboa出身の女性が担当。ほとんど英語で話をしていました。フランス人と乗務員はラテン、私も波長を合わせやすい連中とあり、ついつい長い立ち話。このフランス人、有名校の出身で外国へ飛び出しただけあって、他国の文化への理解も深く、冗談や会話のレベル設定は容易。いろいろな話で盛り上がりました。

  Premiumu LoungeのChampagneはKrug。このフランス人はご機嫌でした。わたしも2杯もらいましたが、彼は4杯は飲んでいたはず。クルーは2回ボトルを開けていました。それほど冷えていなかったことに加え、出荷から日が浅かったようで、2回とも失敗。元気なボトルたちでした。力強いKrugに相応しい若々しさです。味わいも上々。

 フランス人とdégorgementの日付探しをする羽目に。Krugのラベルには記載がないはずですが、念のため。

 

ともあれ、このスペースはとても良いと思います。乗客どうしが歓談できて。

 

ちなみにプレミアムラウンジに来る少し前に、免税品をお願いしたのですが、乗務員はわざわざラウンジまで運んで来ました。支払いもそこで済ませました。サービスに「ほころび」がありません。

 なんだか、わたくしミシュランの覆面調査員のようなことを行っています。

 

後1時間で着陸という頃、自分のシートに戻ります。予想通り、窓のシェードは全て降りており、キャビンは暗くなっています。東欧が終わるあたりを飛んでいます。

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担当クルーが、お茶を持ってきてくれました。失礼して、黒いシェードは少し開けさせてもらいます。

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地図では、馴染みある地名がだんだん増えてきます。こんなところまで来たら、シェードは強制開放。キャビンは一気に明るくなります。

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後は順調にCDGまで飛び続け、北側滑走路を西向きに着陸。QRはTerminal 1を使うので、地上の移動がもっとも少ないパターンです。

 

Terminal 1は、この空港で一番古いターミナル。さすがに基本デザインが時代遅れになってきました。凝った建築ですが、開口部が小さく、何だか垢抜けません。動線は短いのですが、迂回が基本になるので意外とストレスになります。荷物のターンテーブルに到着したのは、13:15。まだ荷物は出てきません。

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ファーストクラスとビジネスクラスの預入れ手荷物は、同時に出てきました。このハンドリングは恐らくDOH側の問題。もっとも3人の客のため、特別なことを行うのはやりすぎという判断も分からないわけではありません。

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エールフランスのシャトルバスで市内に向かいます。ターミナルで15分待ち。ホテルに入るのは15:00ごろだろうと、この辺で予想が立ちます。バスの窓からは今までお世話になってきた機材が見えます。Terminal 1では、バス、タクシーは建物を周回するので。

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前回QRでCDGに来たときはA330だったか、同じようにバスから機材を見たことを思い出しました。このA380は、もうDohaに帰る準備をしています。この帰還便を担当するのは、昨日のQR39の担当クルー。今日お世話になったクルーは、明日の便でDoha帰還。そういう人と機材の運用です。機材は人の2倍働いています。

 

ファーストクラスの決め手は「退屈の駆逐」。このことを再確認させてくれたQatar Airwaysでした。客船と異なり空間が限られます。IFEは全クラス共通で、大した物を提供できるわけではありません。雑誌、書籍を取り揃えるのも不可能。見知らぬ客同士で退屈を紛らわせるラウンジは古い方法ですが、今の時代でも効果的です。