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ANA 対 JAL:ANAの良いところ

最近ベルリンから届いたメールは、Komische Oper の衣装部門がストックを売り払うというお知らせ。

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2000以上の衣装アイテムが1 ~ 800 EURで販売されます。オペラファンでなくても、パーティ用にと考えるところ。

 仮装と言うと、日本だとコスプレイベントやハロウィンになりますが、西欧では内輪のパーティが主な舞台。街の貸衣装屋もあり、最近ではアマゾンで様々な衣装(のセット)が手頃な価格で購入できます。

 オペラで利用された衣装なら、仮装用としては一級品。衣桁にかかる打掛のごとく居間に飾り、興が乗ったら客人の前で身にまとうとか、客人に着せて記念撮影するとか、いろいろ楽しめそうです。(今回販売されるかどうか知りませんが、例えば Der Rosenkavalier の)一作品の衣装を全て購入すれば、美術館のように陳列することも可能です。自宅や自分自身の箔付けには、抜群の費用対効果になりそうです。11月16日(土)に Berlin に行けるなら、購入に挑戦してはどうでしょう。

 

普段と異なるシュールな外観に扮するお遊びは、古今東西を問わず根強い人気があります。「変わった姿になりたい」という希求は人によっていろいろですが、強い人向けにお手軽な存在が、日本の空港でよく見かけるアレ。

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写真は伊丹空港の南ターミナル、チェックインホール。ANA の機長か搭乗客に扮することができます。機材は B787?明らかに ANA が主役で、日本を感じさせる背景は完全にオマケ。表現されるのは ANA だけ。

 

一方で JAL も保安検査後のホールに同様の板を置いてあります。JALの機長と客室乗務員に扮することができ、地上係員や整備士にはなれません。ANAと大きな違いは、これらのキャラクターが大阪のベタな表現*に溶け込んでいる点です。

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観光地のハメ撮り板のような、前時代のアトラクション(?)も ANAJAL で大きく違います。ANA の板は左足の ITM を IAD に変えれば、ワシントンでも使えます。結局 ANA を強調する機能しかありません。ここまで有名な会社をこういう形で印象付ける意味はなく、どこでも同じ絵になるデメリットの方が大きいでしょう。一方で JAL は土地の特性を強調、地域に寄り添う姿勢を表現します。旅客には土地固有の体験を提供し、地域住民には地元に溶け込む企業を印象付けます。

 細かい点はおざなりな ANA と細かい点は優等生の JAL という特徴は、こんなところにも現れます。

 

*:「ベタな」という見方には自信が持てません。事実を述べると、板に描かれる太陽の塔大阪城天守閣通天閣阪神タイガース甲子園球場、たこ焼き(発明の地)は全て旧摂津国の主要部分に存在します。ついでに「まいどおおきに食堂」のフジオフードも同じ。つまり今日の「大阪」のうち、一国の諸物のみが描かれます。大阪の名を冠する空港という立場はどこに行ったのでしょうか。根が深いのは、関係者がこの偏向ぶりを気にしないどころか、気付きもしないと予想される点にあります。豊中や伊丹、池田はもとより、その周辺の地域で生まれ育つと、「大阪」はこんな姿になります。百舌鳥古墳群岸和田だんじりなど、「そんなんもあったな」みたいな風物も描かれるべきですが、イメージを重ねることができません。畿内によくある文化的近眼の結果なのか、普遍性を持つ価値は摂津でしか生まれないのか、和泉に関空、河内に八尾空港があるからなのか判断がつきかねます。

 

前置きが長くなりましたが、様々な点に違いが認められる ANAJAL。海外の会社も比較に持ち出すと、大同小異の2社であることはすぐにわかりますが、同類二者の比較で大きな違いを見つけることは、いろいろな観点から重要。今日は普段から ANA の方が優れていると思っていることを並べます。

 

① チャレンジングなこと

失敗を恐れず、新しいことはとにかく挑戦!という姿勢は ANA の方が顕著だと感じています。諸般の事情から買う羽目になった A380の件では、ハワイ路線導入までは想像通り。しかしこれを挑戦の機会とし、新機軸をいろいろと打ち出した点には好感が持てました。

 やや猪突猛進型のANAに対して、JAL は優等生的。新しいことには慎重に準備します。この差は最近、ウラジオストク就航にも現れました。当初は夏スケジュールから1日1便で始めるつもりだった JAL。いつものように病的に張り合う ANA日本の航空会社初にこだわりを見せ、貧相な運航で JAL より早い路線開設を画策。これは JAL想定の範囲内。それではと、バタバタしている ANA を横目に、密かに就航前倒しの可能性を検討、水面下で計画を進めたようです。ANA の就航日発表を待ち、JALはそれを上回る就航前倒しを発表、ANAに大恥をかかせます。ANAが独り相撲を始めて、無様に転ぶように見せた JAL の一本でした。

 ANA はこんな程度の低い失敗もしますが、大部分は独自に頑張った結果に伴う仔細な事です。新しいことを始めた場合、頭から尻尾まで完璧に成功する必要はありません。小さい失敗を許容する精神は、健全な社会の必要条件。ANAに特徴的だと言えるのはスラップスティック的な失敗が多いこと。A380 のお披露目でドヤ顔の社長が Fly NG と発表したのもそう。「プレミアムパス300」でトンでもない客層を開拓したこともそう。詰めが甘いから、こういう結果を招くのでしょう。しかしこういう失敗は深刻な事態とはなりえず、笑えます。つまりネタ的には秀逸で、ソーシャルメディアに歓迎されます。これもある意味で JAL より優れた点。

 最近 JAL が国際線で始めた「搭乗順番グループ」。ANAでは国内線ですら行っており、かなり先行しています。しかし、米国各社では何年も前から当然の搭乗方法です。これはチャレンジングでも、先進的でもありません。ただJALは周回遅れなので、ANAはドヤ顔で日本初をする余地がありました。チャンスを逃しましたね。

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②社員が生き生きと働いているように見えること

客として接した限りの印象ですし、個人による差の方が大きいことを予め述べておきます。その上でANAの社員は、JALの社員より全般的に生き生きしているようです。マニュアルと訓練が行き届いており、上部で客をあしらう点は二社で共通しますが、それを越えたところに溌溂さが感じられるANA

 会社案内やプレスリリースなどで、本来外向きに語るべき内容がなぜか内向きになっていることなど、ANAに見られる奇妙な事象はこのことに符合するかもしれません。社員を大切にする姿勢を徹頭徹尾、立場を顧みず表現するのが社是で、それが功を奏しているのではないかと思われます。

 

③ワインに関する理解と層の厚さ

集団としてのワインの理解に相当なものが感じられます。ソムリエ資格を持つ社員が何人などという表面的な事柄ではなく、サービスとワインの関係とか、顧客の属性とワインの相関を理解する人材が豊富だと感じます。

 とある夕刻の ANA スイートラウンジ。ワインを知って10年も経たないような社員がワインリストから、Abruzzo のシャルドネを勧めてきます。何の脈絡もありません。客は勧めてくる社員に「このワインを飲んだことがあるのか?」と「なぜこのワインを勧めるのか?」を質問するところ。第一の質問への回答がYesで、第二の質問へ筋が通った説明ができないようでは、給仕としては失格です。

 その入社5年目ぐらいの若者の答えは、Yesで「僕、シャルドネが好きなんです」でした。全く馬鹿げた返答ですが、ストレート過ぎて客に共感を呼び起こします。この若者、ある経験によりシャルドネの魅力に囚われたように感じられます。長らくワイン好きをやっている客だと同様の経験を数多く持つため、この若者に興味が湧きます。会話が続く可能性が高いのです。給仕としては落第、社のサービスとしては傑出しています。

 ワインは、シャルドネ云々より Abruzzo そのものでした。ワインの理解が偏っていると言われても仕方ありません。しかしここはグランドメゾンではなく、眼前の男は初心者。正鵠を射る表現よりも、素直に述べられた表現の方が印象に残ります。

 感心したのは、ANAがこういう人間を配置できることです。客がワイン好きの会社経営者だったら、名刺を渡して私的なワイン会にこの社員を招待するという展開も考えられます。それはこの社員にとっても、ANAにとっても良い結果になります。

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しかし大胆です。サービスの現場で、こういうフォーメーションが組める上司がいることに驚きました。ワインに関心が高い者の層が厚いことが窺われます。