表題はCathay Pacificのステートメントから。
改革の噂が流れていましたが、内容が発表されました。Cathay PacificのMarco Polo Club(MPC)。上級会員になるための基準と会員の特典内容が変わります。来年4月から搭乗距離と予約クラスに応じたClub Pointが導入されます。CXは古典的なシステムから、BAやQFと同種のシステムに移行するようです。
マイレージプログラム(FFP)はAAが始めたとされますが、「多く乗る客に報いる」システムです。今でもAAは、
・格安エコノミーでもマイルが100%加算される
・上級会員資格の基準に積算マイルを利用する
という古典的な制度を維持しています。
エコノミークラスの利用客でも「適正な」利益を出すなら、FFPは拡大再生産に貢献し、特に悪い点はありません。しかし時代は大きく変わりました。エコノミークラスが、利益の元ではなく運航経費の捻出と見なされるようになってずいぶん経ちます。場合によっては輸送に関するサービスを切り詰める(例えば受託手荷物有料化とか、機内食有料化とか)ぐらいですから、支払の一部還元である「マイルによる優待」が削られるのは当然です。
また航空会社自体、拡大より収益重視になってきています。この業界、国家に守られていた時代は良かったのですが、今では経営環境に変動があるとすぐ倒産します。利益率が外部環境の変化を吸収するには低すぎるのです。
今では単に「多く利用してもらう」のではなく、「利益を出す客に多く利用してもらう」ことが必要という理屈も理解できます。FFPも変わらざる得ません。
急進的と言うかiconoclasticに断行したのはDLやUAで、今年から「マイル」は支払金額基準で計算されます。即物的ですね。これは他社との制度の整合性が悪いのですが、ついでに提携各社の利用ではマイルがあまり積算されないように改革してしまえばOKです。
BA, QF, QRなどは、搭乗マイルとは別に搭乗距離と予約クラスに応じたポイントを設定します。利益が大きい予約クラスで獲得ポイントを厚くするのは簡単です。市場の変化に対応したFFPの改革は、このポイントを調整するだけでよいので簡単です。ワンクッション置くことにより、拝金的には見えなくなる点で優れています。
CXもAA型からBA型へ「進化」します。DL型にならなかったのはせめてもの救いです。
距離によって少し違いますが、格安ビジネスを利用すると、格安エコノミーの2.5倍ほどClub Pointsが貯まります。BAの場合この係数は8ですから、新生CXの方がまだ穏やかです。それだけCXは格安エコノミーの客を大切にしているとも主張できそうです。
”Life well Travelled”ですから。wellは2つの意味にとれます。
しかしながら格安エコノミーだけの利用では、上級会員到達は難しくなります。例えばHND-HKG-BKKをVクラスで往復すると、Club Pointsは40。ゴールド会員は600、ダイヤモンド会員は1,200 ptsが基準なので、それぞれ15往復(60搭乗)、30往復(120搭乗)必要です。現在は10往復でゴールド、20往復でダイヤモンドですから50%増しです。
フライングブルーだとスカイチーム各社の利用では、30搭乗でゴールド(SkyTeam Elite Plus)、60搭乗でプラチナ(SkyTeam Elite Plus)です。CXは一ランク厳しい気がします。CXと同じoneworldのBAエグゼクティブクラブ会員がこの路線・予約クラスを利用しても、tier pointsは20にしかなりません。シルバー、ゴールドの基準はそれぞれ600、1,500なので、CXの方がかなり楽です。
一方、同じ経路をビジネスクラス(Iクラス)でよく往復する客がいたとします。この人がダイヤモンド会員になるためには、年間17往復必要だったのですが、改革後は12往復で済みます。CXに多い750 miles~2,000 miles程度の区間をビジネスクラスで頻繁に行き来するMPC会員にとっては、今回のニュースは朗報です。
特典の方では、直前のVクラスの席保証がYクラスの席保証になります。このゴールド会員、ダイヤモンド会員の特権は継続されますが、かなり高価なものになります。Vクラスでも保証するというのは、どう考えても負担が大きすぎます。今後はAF-KLM並みの内容となります。
主にエコノミー利用する会員の離心は避けられないでしょう。一方で新会員は獲得できるのでしょうか。TG, SQ, CIと比べると、上級会員特典は魅力があっても、その基準は少々高く感じます。
入会金も値上がるし、FFP会員も選んだ方が良いと考えているのでしょうか。