PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

優先搭乗を中止するANA

ANAと言えば「ダイヤモンドサービス」メンバー、通称ダイヤモンド会員。そしてダイヤモンド会員と言えば、連想されるのは優先搭乗。さらに付け加えると、ANAの優先搭乗に不慣れだなんて、世界のビジネスパーソンにはありえないことです。読者諸氏も知らぬなどとシラを切ることはありますまいが、以降の話との対比のため、復習します。ANAでは、次の手順で搭乗が行われます。

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事前改札サービス

Group1

  「ダイヤモンドサービス」メンバー

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Group2

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Group3

    全てのお客様

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ところが6月19日以降、搭乗の順番は次のようになります。

 

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事前改札サービス

Group 1 後方窓側席

Group 2 後方中央席

Group 3 後方通路席

Group 4 前方窓側席

Group 5 前方中央席

Group 6 前方通路席

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搭乗案内方法について | 空港・機内で [国内線] | ANA

 

ダイヤモンド会員は、これを知って卒倒したかもしれません。「ダイヤはどこだ!」と。落雷直撃を受けた気分でしょう。心中お察しいたします。しかしよく読むと、完全ではないものの、優先搭乗は残されていました。

 

「各グループ内において、スター アライアンス・ゴールドメンバー専用レーンを設置してご案内いたします。」

 

Pechedenferはむしろこの記述を見て、卒倒しました。ANA利用なのに、ダイヤモンド会員がスタアラゴールド扱いされる屈辱……のためではなく、レーンの数のためです。各グループごとに会員専用レーンを設置するということは、レーンが12種類も出現します。12列の中から正しいものを選べなんて、一般客の能力を超えています。手元のチケットの表示と看板を対応させるのが第一の関門。列の最後尾と看板とを対応させるのが第二の関門。まさに de Charybde en Scylla という展開。

 

Group 1~6にはシート番号を表示せざる得ないでしょう。大きな空港ではゲートごとに機材が決まっているわけではないので、用意する看板、ボードの類は相当な数になります。使っていないボードがゲート脇の空間にごちゃごちゃと放置されるのは見ものです。

 そしてゲートの地上係員は、出発便ごとに縄張りを作り直す必要があります。作業量が数倍になって、てんてこ舞いの係員に、あらぬ場所であたふたしている年寄り一行。かなりエクセレントな状況になりそうです。

 

今週末は、羽田空港第2ターミナルのあちこちでカオスが発生しますね。見学だけなら面白そうですが、搭乗券がないと搭乗ゲートにたどり着けません。かといってカオスを構成する一員になるのは御免です。スターフライヤー関空にでも行きますか。

 

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もちろん今度の優先搭乗中止は、感染防止のためです。優先搭乗をしばらく中止して、ゾーンごとの搭乗に切り替える会社は他にもあります。Vistara、大韓航空、Finnair、Scoot、Air France などがすでに実施しています。しかし ANA は「日本の航空会社で初」。この枕詞は使うべきでした。

 

今のところ JAL は搭乗方法について、ほとんど何も対策を行っていません。前後の間隔を空けて並ぶことを搭乗客にお願いするぐらいでしょう。ANAは先進性が際立ちますね。

 新しい方法の採用では ANA は突っ走ることが多いので、降機に関しても感染防止策を導入する可能性があります。ただ搭乗時と真逆の順番、Group6 から Group1 の順番で出口に誘導すればよいので、これは簡単です。アナウンスだけで良いのも利点。空港の地上職員の要求とは異なり、機内での乗務員の指示には強制力があるので、従わざるえません。

 ANA は収益に影響がない対策には熱心に取り組みますが、JAL やデルタのように全便で隣席を空けるという抜本的な方法は採用しないようですね。コストがかかると言っても、余計に焚く燃料ぐらいなのですけれど...。感染防止に真面目に取り組むように見せかけ、衛生対策にちっともコストをかけない。これが8年連続

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の極意です。

 

さてさて、コロナ禍の影響でラウンジのサービスも、搭乗時のサービスも簡略化される一方。どや顔で他の客より先に搭乗するというささやかな喜びも奪われました。「それでもあなたはダイヤモンド修行を続けますか」なんて話も出てきそうです。 

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