PECHEDENFERのブログ

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JAL メタル会員が制度化

 

JAL マイレージバンクの FLY ON プログラムが変わります。今まで会員ランクの最上位はダイヤモンドステイタスでしたが、その上にメタルのランクが新設されます。正確には、「ダイヤモンドステイタスの中にダイヤモンドメタル特典が受けられる JMB 会員がいる」となります。今年のポイント積算から対象、ステイタスは来年度からです。

JAL | 新しいFLY ON サービス 「ダイヤモンドメタル特典」

 

前史

ただしこの新ランクに属する会員はすでに多数います。現在まではダイヤモンド会員の一部を招待して、チタン製カードを贈呈していたのです。ダイヤモンド会員にはない特典も加わりました。

 実際のところ、2011年にはこのメタルカードが存在していました。

JALの会員ステータスの最高峰「ダイヤモンド」 そのダイヤモンドの中でも特別な会員の「メタル」とは? - ポイ探ニュース

ただし当初は「カードが存在」です。一部のダイヤモンド会員にチタンカードとそれが10枚入るカード入れを贈呈しただけだったようです。その後、JALに隠れステータスがあると話題になり、いろいろな情報が世に出回ることになります。そして特典が徐々に拡充されたこと、当初のメタル会員は特に搭乗実績が大きかったわけではないことが明らかになりました。となると、JALは最初から新ステイタスを追加する予定で実証実験を行っていたと判断すべきでしょう。

 JALはメタルカードを毎年進呈されるダイヤモンドステイタスの会員が存在することは認めても、メタルというステイタスは認めなかったはずです。招待制「ステイタス」であると、世の中が勝手に思うよう誘導したとも言えます。ほどなくダイヤモンド会員基準をはるかに超える搭乗実績の会員が招待されるようになり、メタルは実質的な最上級会員ステイタスとして機能していました。

 

当初に贈られたカード入れが一杯になる頃、制度化して基準が公開されるだろうとは思っていましたが、新ステイタスプログラムの開始年に同期することになりました。COVID 騒ぎで予定から遅れたかもしれません。いずれにしても 2023-2024 は JAL の会員プログラムにとって歴史的な年になりました。関係者は充実感を感じているのではないかと思います。

 

基準と特典

メタル特典を受けるための基準はJAL グループの搭乗で暦年中に 150,000 FLY ON ポイント獲得するか、180回の搭乗かつ50,000 FLY ON ポイントの獲得です。数字の上ではダイヤモンドステイタス基準の1.5倍ですが、ワンワールド加盟の提携他社の搭乗は全くカウントされません。JALグループの利用だけです。JAL 会員にはJAL ばかり利用する方が多いので、ダイヤモンドの1.5倍の難易度という評価で良いかと思います。

 

このレベルの会員の制度化では ANA が先を走っていますが、JAL の基準設定は ANA にそっくりになりました。

https://www.ana.co.jp/ja/jp/amc/premium/

 

ダイヤモンド会員に無いメタル会員の特典は 5つあります。

予約確約は JAL としては思い切った特典です。対象はHND-ITM, HND-CTS, HND-FUK の三路線で、普通席の予約変更可能運賃が適用されます。国内出張が本当に多い会員には大変ありがたい特典になりそうです。もちろん海外他社ではこの種の特典はずいぶん昔からあるわけで、比較すると色あせます。マイルの寿命撤廃特典と同じです。

 

インパク

三大航空連合に所属するようなレガシーキャリアの上級会員制は基準が似たり寄ったりで、もともと1年間の搭乗が 30,000、50,000、100,000 マイルの3種類が目安でした。多少上がったり下がったりして、2020年以降は30,000、50,000、100,000、150,000 マイルが目安となっています。150,000マイル級の会員はアメリカのデルタ航空が先行していて、UAやAAも料金制導入に前後してこのレベルに換算できる会員レベルを設けています。ANAJAL もほぼこれに並んだわけです。

 一方、北米三社は基準非公開の招待制の会員レベルをそれぞれ設けています。一般の会員基準からかけ離れており、ビジネスクラス以上の利用だけで年間5万ドル利用が最低ラインなどといった感じです。

 欧州三社も上位は高めの設定です。例えば BA のシルバー会員は JALサファイア会員に相当しますが、そのすぐ上のゴールド会員はシルバーの基準の2.5倍が要求され、さらに上のGGL会員はゴールド会員基準の3.33倍で獲得、2倍で維持です。サファイアの上がダイヤモンドでその基準が 125,000 FOP であり、さらに上のメタルは 420,000 FOP で獲得、250,000 FOP で維持というシステムを想像してみて下さい。目盛りがかなり違うことが分かります。

 ちなみにBA のシルバー会員は国内線普通席を年間 50 - 60 回(ビジネスクラスだと15回)の利用が目安。ビジネスクラス偏重とは言うものの、JALサファイア会員に比べて決して楽というわけではありません。

 JALメタル会員も現在は招待制であり、近年招待されたの方の年間搭乗実績は300,000 FOP とか、国内線260回などというレベルでした。

 

以上の点を考えると、制度化されたメタル会員の基準は極めて低く、毎年招待されそうな搭乗を行っていた者や、外部から眺めていた者にとっては失望する内容となりました。

 逆に多少余裕をもってダイヤモンド会員を続ける程度の会員には朗報でしょう。今年は夢が加わります。こちらの方が絶対数は桁違いに多いはずなので、短期的には ANA の搭乗を奪うことになりそうです。

 

基準非公開で並外れた搭乗実績の会員がいる事実から、神秘性をまとっていたメタル会員。神秘性は喪失し、JAL ブランドの魅力はかなり減じられました。ただ航空会社にとってサービス展開の拡大充実は本能のようなもの。JAL は当然次を考えています。搭乗記録の精密化が必要ですが、フレックスエコノミーとビジネス、ファーストクラスの利用が多い客を対象に基準非公開の招待制会員制度を設けるのではないかと思います。この場合、基準は200,000 FOP 以上でその搭乗を実現した航空券の購入金額が 600万円以上などとなるでしょう。

 

そんな招待制会員の噂が聞こえて来る日までは、退屈しそうです。