PECHEDENFERのブログ

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JGC と SFC の特徴・永続性(その 2)

力の源泉

JGCSFC の商品力の起源を探してみると、結局ブランドを確立したことに行き着くます。次の2点が指摘できます。

 

(3-1) JGC vs JMB Sapphire、SFC vs AMC Platinum

JGC は JMB サファイア会員と、SFC は AMC プラチナ会員と同等の特典を持つ会員だと理解されています。しかし実際は、JGCSFC は JMB、AMC の中に一致する会員種別がなく別種の会員です。ワンワールドサファイア会員、スターアライアンスのゴールド会員の特典は死守されていますが、その他の特典は削られているのはご存じの通り。やはり航空会社としては、実際に搭乗する客を上に扱わざる得ません。

 

つまり形式的にも実質的にも

 

JMBサファイアJGC

AMC プラチナ > SFC

 

なのですが、

 

JMBサファイアJGC

AMC プラチナ ≒ SFC

 

と誤解されやすい点にこれらのクレジットカードの商品力を見ることができます。実力以上に高い価値が認められることは、ブランドビジネスの最重要ポイント。

 

(3-2) クレジットカード付帯特典 vs ライフタイム会員

JGCワンワールドのライフタイム・サファイア会員、SFCスターアライアンスのライフタイム・ゴールド会員だと認識されています。そしてその基準が極端に低く、他社では100万~200万マイル級の搭乗が必要になるのに対して、5万マイル級の搭乗でよいので恵まれた状況にあるという理解になっています。この考え方に意義を唱える人はあまりいないでしょう。

 それではさらに恵まれているのは、アメリカンエキスプレスのスカイマイル・ゴールド会員ではないでしょうか。入会時に FFP 上級会員資格であることを必要としません。

 この商品は JGCSFC ほどには人気がなく、年会費はシビアに見られているようです。スカイチームが国内線を持たないというところに理由があるとしたら、ワンワールドスターアライアンスのライフタイムステータスとの触れ込みが強調されるのはおかしな話です。

 

海外FFPライフタイム会員、デルタ・ゴールド会員との比較では、一般的な認識は以下のようになっているのではないでしょうか。

特典:good 海外 FFP ライフタイム会員 ≒ JGC, SFC ≧ デルタ・ゴールド bad

費用:good JGC, SFC ≦ デルタ・ゴールド <<< 海外 FFP ライフタイム会員 bad

 

しかし現実には、(1) JGCSFCFFP ライフタイム会員(ライフタイム・JMBサファイア、ライフタイム・AMCプラチナ)ではなく、FFP 特典の一部が享受できるクレカ会員であること、(2) 搭乗実績を問題にする場合、料金の対価としてのサービスはほとんど受けていること、(3) クレジットカードではかなりの年会費を納めなければならないことから事実は

 

特典:good 海外 FFP ライフタイム会員 = デルタ・ゴールド > JGC, SFC  bad

費用:good 海外 FFP ライフタイム会員 <<< JGC, SFC ≦ デルタ・ゴールド bad

 

です。

 絶対値をみれば他社 FFP ライフタイム会員になる方が圧倒的に費用はかかります。しかしそれはそれだけのサービスを受けているので当たり前。余計な支払いが多いのは、JGCSFC。割高なやり方です。JGCSFC の会員の側から見れば、

FFPライフタイム会員は費用がかかり過ぎるし、そもそもそんなに利用しない

・海外の航空会社は馴染みがない

という理由で割高な商品に手を出しています。

 一方、大雑把ですが、会社の立場では FFP ライフタイム会員が 1人でることは、JGCSFC で20人の会員が 20 ~ 30 年間会費を振込んでくれることと変わりません。ただし会員数は膨大なものになります。広く、浅く、長く集めると、利益は桁違いに大きくなる例になるようです。

 

控え目に言っても、JGCSFC は次の状態を実現しています。価値、費用について本来いろいろな考え方が可能な中、価値については最大に、費用については最小に見積もる者がほとんど。

 客が多様な考え方をできない点に JGCSFC の力を見ることができます。

 

付加価値が素晴らしいものに見え、どこに金を払っているか見えない商品で儲ける。優れたブランドビジネスです。

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サステイナビリティ

一部の JGCSFC の会員は、クレジットカードの年会費を納めるだけで空港ラウンジが無料利用できる制度はいつまで続くのだろうかと心配のご様子です。しかし航空会社の経費が年会費に到達するには、国際線で 5回超の利用が目安になります。この利用頻度は、JGCSFC 会員の平均値より大きいのではないでしょうか。

 会員数が多すぎるので、JALANA の会員で世界中のラウンジが混雑するという弊害から、制度が廃止されるという心配もあります。しかし甘い基準で世界中から会員を集め、どんどん上級会員にする Qatar 航空のような会社もあります。JALANA だけが問題になるわけではありません。

 

以上は過度の心配に対する消極的な反論ですが、JGCSFCFFP ライフタイム会員制度より構造的に優れている点を持ちます。それはクレジットカードの付帯特典である点です。年会費を上げるとか、家族会員の利用条件を厳しくするとか、廃止までにソフトな対策はいくらでも打てます。一方ライフタイム会員制度では、一度ライフタイム会員にしてしまうと、航空会社には単なる負債です。そして会社が消滅しない限り、ライフタイム会員の地位は事実上保証されています。JGCSFC が状況悪化を吸収できるパラメーターを数多く持つのに対して、制度廃止(=新規のライフタイム会員の中止)ぐらいしか手がありません。クリスフライヤ―では、実際にこれを行いました。(新規のライフタイムソリティア PPS クラブ会員の中止)

 年会費の値上げにしても、新しい特典をつければ理解してもらえます。そこはクレジットカード。方法は確立しているし、さらに儲かるビジネスも考案できます。例えば JGCSFC ではホテルプログラムとの連携は未開拓。近い将来値上げのネタに使われる可能性が高い気がします。

 

ということで、心配する会員が多いようですが、JGCSFC の制度は盤石、相対的に持続性が高いのです。枕を高くして寝られます。いや寝ている暇があったら、搭乗する方が会社に喜ばれます。JGCSFC を死蔵するのはもったいないことです。

 

ミリオンマイラープログラム

JALANA を比較した時、前者の FFP はミリオンマイラープログラムを持ちません。ミリオンマイラープログラムがあるのは JGC です。年会費を延々と払い続けていないと、プログラムの対象になりません。

 

有料か、無料かという違いは決定的な差ですが、JALANA の会員たちの関心はミリオンマイラーの(他の)基準と特典内容の違いにだけ向かいます。これはクレジットカードの年会費が、空気のような存在になっていることを意味します。この年会費の存在感の無さは、JGCSFCの制度持続が心配だとする会員の心理とも一致します。

 

みんな料金を忘れてしまうとは、JGCSFC のビジネスがいかに巧妙か、お分かりいただけるはずです。NHKアマゾンプライムなどが目指す理想の姿がここにあります。JALANA も大したものです。