PECHEDENFERのブログ

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フィンエアは Avios と支払金額制を導入

 

フィンエアの顧客プログラムフィンエアプラスは、2024年の早い時期に大きく内容が変わります。具体的な数字はまだ発表されていません。

A new era for Finnair Plus starts in 2024 | Finnair

 

フィンエア、お前もか

フライト利用に応じて還元される無料航空券(など)は、航空券購入金額を元に計算される支払金額制への移行が徐々に拡大しています。欧州ではすでに

エールフランス-KLM (AF, KL, RO, HV/TO)のフライングブルー

イベリア航空 (IB) のイベリアプラス

エアヨーロッパ (UX) のスマ

ITA (AZ) の Volare

が導入済みで、

ルフトハンザグループ (LH, OS, LX, JP, LO, OU, EN, LG, SN, 4U) のマイルズ&モア

ブリティッシュエアウェイズ (BA) のエグゼクティブクラブ

では近日中に導入されます。そこに1年以内に

フィンエア (AY) のフィンエアプラス

が加わります。欧州で(長距離路線を複数持つような会社のうち)古典的な距離制のプログラムになっているのは

SAS (SK) のユーロボーナス(ただし区域、路線別なので大雑把)

TAP エアポルトガル (TP) のマイルズ&ゴー

ぐらいになってしまいました。これら2社が他社にはない特別な状況に置かれているとも考えにくいので、後追いする可能性が高いと思います。

 

共通通貨 Avios の導入

現在のフィンエアプラスは利用距離に応じたポイント(おそらくメトリック単位)で利用実績を測っていましたが、Avios を利用することになります。会員が現在保持しているポイントは 3:2 の割合で Avios に変換されます。

 もともと Avios は IAG 傘下の BA, IB, EI, VYの「共通通貨」。顧客プログラムはそれぞれ別です。最近カタール航空 (QR) も Avios を利用するようになり、BA, IB, QR のプログラム間では Avios を相互移行できるようになりました。

 共通というのは、0 か 1 かという話ではなく、いろいろなレベルが考えられます。例えば Avios 移行はできなくても、共通プラットフォームで旅行商品(宿泊、レンタカー、航空券など)購入ができるなどというシステムです。おそらく IAG(カタール政府が最大株主)はまずそういう方向でビジネスを進めることでしょう。

 

そういう未来がある程度予想される中でのフィンエアプラスの Avios 利用です。数多くの会社の顧客プログラムのうち、金(債権)が動く部分を共通化すれば、顧客の利便は向上、スケールメリットが得られます。一方でプログラムは独立しているので、各会社の実情に応じて様々な調整ができます。ルフトハンザが自社プログラムを利用する会社を増やしたのとは、かなり異なった世界戦略が見えてきます。

なおフィンエアプラスでは、荷物の追加、座席指定、機内食などに関する支払いも Avios 獲得の対象となります。この辺は BA などと同じ。

 

上級会員資格は Tier Points で評価

現在フィンエアプラスの上級会員資格は、利用距離か利用回数のどちらかの基準を達成すれば得られます。改革後はこの部分も支払金額制になります。つまり支払った金額を基に Tier Points が計算され、規定の期間中(おそらく1年間)積算され、総計で次期会員資格が決まるというシステム。

 欧州の支払金額制プログラム先行組も、会員資格は距離区分と利用キャビン区分で計算されるポイントで評価します。フィンエアはこれも支払金額制ですので、もっともラジカルな変革と言えます。北米では、アメリカン航空がこの方式です。アメリカン航空の場合は自社提携クレジットカード利用でもポイントが貯められるので、この部分はかなり大きな違いになるかもしれません。

 

会員種別(シルバー、ゴールド、プラチナ、プラチナルモ)は変わらないようです。

 

その他の特典

一つの上級会員資格に達する基準とその上の会員資格に達する基準との間に Milestone を設けます。利用実績がそこに到達したら特典が得られます。特典内容には Avios ボーナス、ラウンジアクセス、アップグレードなどが例示されています。

 ゴールド会員、プラチナ会員、プラチナルモ会員のアップグレード特典は単純化されます。

 特典航空券枠が増え、各フライトで席数が保証されます。以下は用意される最低数。

欧州内:エコノミー4、ビジネス2

大陸間:エコノミー4、プレミアムエコノミー2、ビジネス2

ドバイは大陸間の扱いになります。

 

距離制か支払金額制か

種々の規制が強い国・地域では、規制のおかげで料金は保たれ、給与は保証され、儲けるわけにもいかず、減益で潰れるわけでもありません。経営には国家からの口出しが入ります。利益について、あまり考える余地がありません。こういう場合、路線網と輸送量の拡大こそが会社の発展であり、経営の目指すところになります。すると良い顧客は、よく利用する客になります。世界全体で規制が強い時代に生まれたマイレージプログラムが、利用距離か利用回数で上客かどうかを量ったのは自然なことでした。

 競争が導入され、航空輸送も利益を考えなければならない時代には、利益をもたらす客が良い客になります。規制か競争かも 0 か 1 かという問題ではありませんが、状況が国や地域によって異なる点には注目すべきでしょう。つまり規制が強い国の航空会社は、距離制を保つ理由があります。

 

距離制から金額制への移行が気になる人は、航空会社のプログラムを選ぶ時にこの観点が必要でしょう。ケニア航空は金額制になったフライングブルーを離脱して、距離制のプログラムを新設しました。フライングブルーのエアカランはマイルの計算を距離基準で行います。カタール航空は Avios を導入しましたが、その計算は距離基準です。これらは距離制維持の背景を説明する例になっていると思います。