支払金額制の質的拡大
すでにアメリカン航空 (AA) のアドバンテージでは、特典に交換できるマイルも上級会員資格の搭乗実績基準も航空券の支払金額で量られるようになっています。どちらも金額制という現在最も「先進の」プログラムですが、ブリティッシュエアウェイズ (BA) とイベリア航空 (IB) 販売の航空券を購入して搭乗した場合でも、同じシステムが適用されるようになります。10月18日の搭乗から新システムに移行。
British Airways − Partner airlines − American Airlines
Iberia − Partner airlines − American Airlines
搭乗により獲得できる特典マイルは、飛行距離を元に(予約クラスの補正を加えて)計算する距離制から、その航空券を購入した金額を基準に計算する支払金額制へ遷移しています。これは顧客プログラムの大きな潮流となっており、北米、欧州はおろか、アジアでもちらほら見かけるようになりました。しかし新方法への移行は、現在まで自社航空券に関してのみ。提携他社の搭乗に関しては、従来通り距離制のマイル計算のままでいした。この壁を崩したことが今回の AA プログラム改革の新しい点です。
提携他社でも緊密な関係
BA と IB は、AA が一緒に大西洋ジョイントベンチャーを行う IAG 傘下の会社。IB はすでに、BA は10月18日から支払金額制へ移行するため、それに合わせて AA の改革が可能になったのでしょう。ただし、
・BA の支払金額制による獲得 Avios の計算は、10月18日以降に購入した航空券と発表されており、システム更新と顧客対応は異なります。
・IB と BA の支払金額制の適用は今のところ自社航空券についてだけで、提携他社の利用に関しては発表がありません。
AA があっさり行うと宣言したところを見ると、技術的な問題は解決済みなのでしょう。航空会社の壁を超えた支払金額制の拡大は時間の問題。
そして別に気になる動きもあります。フィンエア (AY) は2024年の早い時期に Avios を導入し、支払金額制へ移行すると宣言しました。AY も大西洋ジョイントベンチャーの一員です。すると近い将来予想される変化は、
・IB と BA は互いの航空券を購入した時も支払金額制で Avios を計算
・IB, BA, AA 三社間では、他社航空券の購入でも支払金額制で Avios/マイルを計算
・AY も合流して四社間の共通システムとする
あまり明るい未来像は描けません。
JAL は?
さてここで起きていることは、全てワンワールドの航空会社の変化です。ワンワールドと言えば、JAL の行方が気になるところ。JAL は太平洋路線で AA と JV 、欧州路線で BA, IB, AY と JV を行っています。さらに言及するなら、マレーシア路線 JV を行う MH のプログラム Enrich は、支払金額制に移行済みです。
つまり JAL が行うワンワールドの JV では、全ての相手が支払金額制を導入済み。そして太平洋 JV に相当する大西洋 JV は一歩進んで、提携他社フライトでも支払金額制を導入しようとしているのです。
しかし世界の流れがそうだからと支払金額制を採用するという舵取りもなさそうな気がします。いろいろな選択肢が考えられるので、JAL の顧客プログラム(JMBと有料制の新プログラム)がどうなっていくのか、今後も楽しみです。