PECHEDENFERのブログ

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ブリティッシュエアウエイズのアビオスが支払金額制に

 

欧州大手のプログラムの制度は横並びに

実施予告だけがあった BA エグゼクティブクラブの抜本的改革です。10月18日のフライトから変更されます。ただしそれ以前に予約されたフライトには適用されません。(かなり先の航空券まで買っておけば現行どおりの Avios になるはずですが、可能なのでしょうか?)

British Airways Shakes Up Loyalty Program: Avios Points Now Based on Spending - Business Traveler USA

エグゼクティブクラブでは、他社がマイルとして発行する債権をアビオスと呼びます。彼らはプログラムの通貨と称しています。実情はマイルと同じで、利用したフライトの距離を基本とし、航空券の予約クラスによる換算率で修正したものを長年使ってきました。

 アビオスは、エアリンガス、イベリア航空カタール航空も利用するようになり、共通化(一方から他方へのアビオスの振込が可能)も図られています。ちなみにエアリンガス、イベリア航空、BA はすでに経営統合がなされています。

 

この中では、イベリア航空が率先してアビオスの換算を航空券購入の支払金額を基準に計算する方式に変えました。2022年11月のことです。

Avios も支払金額制に - PECHEDENFERのブログ

その時にエグゼクティブクラブも2023年中に同様の変更を行う旨、公表されました。

 

事実は単純ではないのですが、支払金額制は米国のデルタ航空が開祖とされます。航空券の購入金額(税金は除き、各種手数料の扱いはいろいろ)にあるレートをかけ合わせてマイルとします。このレートはプログラムの会員レベルによって異なるという方式です。米国三大手は右に倣えが早く、アジアではマレーシア航空が2021年4月に導入しています。

Miles+Bonus 会員カードのデジタル化、Enrich の改悪 - PECHEDENFERのブログ

 

ヨーロッパでも三大手のプログラムは全てこの方式を採用することになります。ルフトハンザはパンデミックのため導入を2024年1月に延期しましたが、本来もう金額制になっていたはずでした。2024年1月には三大手のプログラムは全て

・上級会員制は搭乗キャビンと距離区分によるポイント

・マイルは航空券購入金額を会員レベルによって異なるレートで換算

となります。

 

他社との比較が行いやすい環境に

BAの場合、航空券の購入金額の他、英語でancillary feesと呼ばれる費用が全てアビオス加算の対象となります。つまりアップグレード、シート変更、荷物追加費用なども対象となります。これは良い点です。

 

欧州他社との数値の比較は以下の通りになります。

 

BA のアビオスへの換算率は

 Blue会員:支払い 1 GBP あたり 6 Avios(6.0 Avios/£)

Bronze会員:支払い 1 GBP あたり 7 Avios(7.0 Avios/£)

  Silver会員:支払い 1 GBP あたり 8 Avios(8.0 Avios/£)

   Gold会員:支払い 1 GBP あたり 9 Avios(9.0 Avios/£)

です。これをすでに発表/実施されている他社プログラムと比較してみましょう。

 

IB のアビオスへの換算率は

Clásica 会員:支払い 1€ あたり 5 Avios(5.8 Avios/£)

   Plata 会員:支払い 1€ あたり 6 Avios(7.0 Avios/£)

  Oro 会員:支払い 1€ あたり 7 Avios(8.1 Avios/£)

Platino 会員:支払い 1€ あたり 8 Avios(9.3 Avios/£)

(Infinita 会員と Infinita Prime 会員は Platino 会員に同じ)

AF のマイルへの換算率は

Explorer 会員:支払い 1€ あたり 4 mile(4.6 mile/£)

  Silver 会員:支払い 1€ あたり 6 mile(7.0 mile/£)

     Gold 会員:支払い 1€ あたり 7 mile(8.1 mile/£)

Platnium 会員:支払い 1€ あたり 8 mile(9.3 mile/£)

LH のマイルへの換算率は

   平会員:支払い 1€ あたり 4 mile(4.6 mile/£)

エリート会員:支払い 1€ あたり 5 mile(5.8 mile/£)

       支払い 1€ あたり 6 mile(7.0 mile/£)

(エリート会員は、LH, LX, OS, UA, AC, JP, EN, OU, LO で 6 mile, 他では 5 mile)

UX のマイルへの換算率は

欧州便

            平会員:支払い 1€ あたり 5 mile(5.8 mile/£)

      Silver 会員:支払い 1€ あたり 7.5 mile(8.7 mile/£)

       Gold 会員:支払い 1€ あたり 8.75 mile(10.2 mile/£)

Platnium 会員:支払い 1€ あたり 10 mile(11.6 mile/£)

南北米便

             平会員:支払い 1€ あたり 6 mile(7.0 mile/£)

      Silver 会員:支払い 1€ あたり 9 mile(10.4 mile/£)

       Gold 会員:支払い 1€ あたり 10.5 mile(12.2 mile/£)

Platnium 会員:支払い 1€ あたり 12 mile(13.9 mile/£)

ビジネスクラス利用は支払い 1€ あたり 3 mile増し(3.5 mile増し/£)

 

 

BA では今回の改革によって

(1) 会員レベルによる獲得マイルの違いが大幅に減少

現在 BA, JL, AA 利用時に得られる Avios は Bronze 会員が25%増し、Silver 会員が50%増し、Gold会員が100%増しです。追加部分は実距離を基準にするので、加算率が小さい格安エコノミークラスの利用では得られるAvios に大きな違いができます。

 たとえば、

加算率25%の航空券ならBlue会員が 1、Bronze会員は 2、Silver会員は 3、Gold会員は 5

100%ならBlue会員が 1、Bronze会員は 1.25、Silver会員は 1.5、Gold会員は 2。

150%ならBlue会員が 1、Bronze会員は 1.17、Silver会員は 1.33、Gold会員は 1.67。

 

改革後は Blue会員 1 なら、Bronze会員は 1.17、Silver会員は 1.33、Gold会員は 1.5

 

になります。エリート会員、特にゴールド会員の特典は大幅削減です。

 

(2) 現行の獲得Avios/料金の最低値ぐらいになる

BAの料金をいろいろ調べると、バカ高い割にはマイルが稼げない航空券を Blue 会員が買う場合、改革後も同程度の Aviosが得られます。むしろこの辺をターゲットにして換算割合を決定したように思われます。一般的には獲得できる Avios は大幅に減ります。

 どの航空会社でも支払い金額制導入の時には、その程度の減少になるので全く驚きはありません。

 

(3) 獲得できる Avios/miles の他社との優劣は会員レベルに依存

上記の各社基準からただちに分かりますが、マイルやアビオスの獲得量は

 平会員の場合 LH = AF < IB ~ BA < UX

中位会員の場合 LH < BA = IB = AF < UX

上位会員の場合 LH < BA < IB = AF < UX

となります。為替レートによって将来は変わりますが、BA はケチな LH に近づいたと言えます。もちろん特典航空券に必要なマイルやアビオス、特典航空券の枠も等しく重要なので、これだけでプログラムがお得かどうかは議論できません。

 

ゴールド会員の威光の消失

獲得できる Avios/miles の他社との比較において、BA の Gold 会員は得な会員レベルではなくなります。少なくともワンワールドのエメラルド会員としては、かなり低いレベルになることでしょう。

 

率直な印象ですが、BA の Gold 会員を獲得するなら JAL のダイヤモンド会員の方が良い気がします。常態となっている FOP 積算キャンペーンがあるうちは、ほとんどの場合そうなると思います。