PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ロシアのウクライナ侵攻

少なくとも今生きている人たちが寿命を迎えるまでは、現代史の一大事変でしょう。

 

2月25日早朝ウクライナの空

世界は MH17 撃墜(2014年 7月)を忘れていません。この状況で民間航空会社のフライトがウクライナの空域に入らないのは当然です。自分でも確かめてみました。

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 予想通り。その分西側が凄いことになっています。

 

カタール航空 QR88 便は DOH 発 ORD 行きですが、Great Circle Mapper で確認すると経路はウクライナを縦断します。しかし今日のフライトでは、明らかにその空域を回避しています。西風の影響も大きくなるだろうし、燃料消費に響きそうです。

 それに加えて、相変わらずカタールは周囲の国から領空通過を許可されないらしく、地中海に到達するまでもサウジアラビアとエジプトを通過しています。2つの空域で大回り。踏んだり蹴ったりの状況。

 

アエロフロート

Boris Johnson の発表ですが、この航空会社は英国の空域から閉め出されました。

Aeroflot Banned From The United Kingdom As Part Of Russian Sanctions

この国の空域は結構広いのではないかと思いますが、世界に点在しているので、とりあえず英国へ離着陸ができなくなったと同じことでしょう。

 

これをもって、マンチェスター・ユナイテッドは9年間にわたるアエロフロートとの提携に終止符を打つとみられています。金をもらっている方がスポンサーを切ります。

 

Boris はこの時、ロシア第二の銀行VTBの英国内の資産凍結を含む10もの懲罰リストを発表しています。対象は120の個人、団体です。

Boris Johnson announces ‘largest ever’ set of sanctions against Russia | Russia | The Guardian

彼はロシアを SWIFT から排除しようと G7 の指導者たちを説得したのですが、失敗しました。スポークスマンによると彼はまだあきらめてはいないとのことです。

 歴史的に見てもそうですが、戦争が起こるとイギリスの政治家たちは先鋭化しますね。ただし一線を越えた時点で毅然とした態度に変わるのは上辺だけで、それが起こるまでに裏で様々な工作をしていたに違いありません。重要なことは、準備をしているということです。

 

ウクライナ外相も「ロシアをSWIFTから排除すべきことを疑う者は、何の罪もないウクライナ人たちの血が彼らの手にあることを理解する必要がある」などとTwitterで発言しています。NATOが軍隊を動かすことは絶望的なので、軍事的には打つ手なし。世界の世論に直接訴えます。

 

おバカな発言で炎上することが多い Twitter ですが、重たい現実に対峙させてくれるのもこのメディア。

 

2月26日追記

ロシアはイギリスに対抗して、イギリス籍の航空会社の空域への乗り入れを禁止しました。そしてアメリカでは、デルタ航空が Aeroflot とのコードシェアを一時的に解消しました。ただしデルタ航空はロシア路線を持っていても、現在運休中です。事態は毎日変わります。

 

ロシアの報復で潜在的に気になること

SWIFT から切り離されるかどうかは分かりませんが、様々な経済制裁の結果、ロシアは報復としてその広大な空域の通過を認めなくなるかもしれません。しかし日欧線についていえば、30年前とは異なり、今は南回りでも中東回りでもそれほど苦になりません。フィンエアは打撃を受ける一方、エチオピア航空のアフリカ経由が注目されるかもしれません。ルフトハンザが新しく登場した 747-400 でやろうとしたノンストップ北極回りも大規模に実施されます。結局のところロシアの大きな歳入減と CO2 排出の増大以外には、影響がない気がします。

 

ウクライナ侵攻は世界経済に影響があったとしても、短期的にはCOVID-19に及ばない気がします。しかし後まで尾を引くことでしょう。

 

2月28日追記

EU 全域で、ロシアの航空機(プライベートジェットを含む)は着陸と通過ができなくなりました。ロシアはそれに対抗して、EU 籍の航空会社の領空への乗り入れと着陸を禁止しました。フィンエアーについては予想した通りの展開になっています。

 

スイスは EU ではありませんが、26日の LX160 便(ZRH 発 NRT 行)はロシア上空を避け、南側に迂回して運航されました。

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現代の航空機の航続距離は冷戦時代より格段に延びており、長距離路線の運航経験も増えました。ロシア上空が通れなくても、日欧便には数時間余計にかかる程度の違いしかありません。

 ソビエト空域が西側航空機に利用できなかった時代は長く続きました。SAS が50年代に ANC 経由北極回り航路を開拓したことは有名ですが、技術的には1989年の B747-400 のデビューまで日欧線では中継地が必要でした。この機材により、航続距離は格段に延び、ノンストップで欧州と成田を運行可能になりました。ルフトハンザが定期便を計画していましたが、ほどなくソビエト空域が通行可能になったため、このノンストップ航路はほとんど幻になりました。A350 などをはじめとする現在の機材は B747 よりはるかに長距離のフライトに適しています。妙な巡り合わせで、この北極ノンストップ航路が復活するかもしれません。

 

S7航空

ノヴォシビルスクとクラビ間に 2月23日就航。3月の終わりまで運航します。64人乗りA321でどうやら週一回の運航となるようです。シベリア人の避寒需要を拾う営業。

TAT welcomes S7 Airlines’ new weekly service between Russia’s Novosibirsk and Thailand’s Krabi - TAT Newsroom

国際紛争に巻き込まれ、錐もみしているアエロフロートに対して、牧歌的な S7 の状況。この路線は戦争を尻目に、しれっと続きそうな気がします。

 

以下は本題に関係ありません。

 

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Louis Jadot はやっぱり白?

日本市場専用キュベ Songes de Bacchus の最終年。今度は白です。税込 2,680 円で 6本購入しました。普通に買っても 3,000円を少し超える程度でしょう。やや酸が弱い気がしますが、堂々たる白ワイン。とてもそんな価格だとは思えませんでした。

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ブラインドで出されたら、「Côte de Beaune 白、ヴィラージュ?」と答えそうです。2016年も当てられるかもしれません。それより「もしかして Louis Jadot?」と言いそうなぐらい生産者に典型的な味わいです。

 Louis Jadot は Chevalier-Montrachet, Les Demoiselles という特級畑が眩しいのですが、それを除外しても白ワインは優れています。あまり外れがありません。ラベルに期待される違いをはっきり表現しつつも、メゾンの味わいは保たれているという横綱の風格。

 一方、彼らが作る赤は質も味わいもいろいろですね。それを面白がってはいけないのでしょうが、赤は記憶に残ります。Bourgogne には赤が評判の domaine、白が評判の domaine とありますが、Louis Jadot は明らかに後者。優等生が面白味に欠けるのは、人の社会と同じです。