PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

提携会社による上級会員向けサービス

 

AA と BA の大西洋 JV

航空会社の地球規模のグループ化は、三大航空連合に見ることができます。それに加えてメジャーキャリアは、特定の地域間輸送で JV を行うのが普通になっています。輸送量が大きい、競争が激しい路線で JV が組まれるのは納得できます。

 旅客の立場からすると、JV で価格が下がるのは良いとしても日によって空港ターミナルが異なったり、チェックインのやり方が異なったり、預入手荷物の条件が違ったりすると、いちいち確認する必要があり面倒です。サービスの共通化は JV の競争力になります。

 

こうして大西洋 JV では、ロンドン LHR と ニューヨーク JFKアメリカン航空 AA とブリティッシュエアウェイズ BA はターミナルを共通化することになりました。本日12月1日、BA 便が利用する JFK のターミナルは T8 に統一されます。これに合わせて AAはターミナルの大改装を行い、AA が展開する空港サービスとしては最高レベルのチェックイン施設、ラウンジ施設をオープンしました。

 

JFK T8 のラウンジ展開

さてこの新 T8 で、AAは3つのラウンジを展開します。

(1) 国際線ファーストクラス用(Chelsea)

(2) ワンワールドエメラルド会員用(Soho)

(3) 国際線ビジネスクラス用(Greenwich)

です。アメリカの国内線では、自社上級会員もラウンジが使えないなど(、おそらく上級会員が多すぎるために設定せざるえない)特殊なルールがあり、それを考慮して (1) ~ (3) それぞれのラウンジ入室資格が定められています。

 ここで画期的なのは、会員種別-ラウンジの分類が拡大されたことです。AA と BA はそれぞれ Concierge Key、GGL という最上レベルの会員種別を持ちます。これらは (1) に入室可、それ以外のエメラルド会員(AA の executive platinum, platinum pro、BA の Gold)は (2) の利用として共通化したことです。

 同じことは LHR T5 でも行われています。LHR T5 では BA がやはり (1), (2), (3) と同種のラウンジを展開しており、AA の Concierge Key 会員は (1) である Concorde Room を BA の GGL 会員と同様に利用できることになりました。

 

パンデミックの最中に BA 専用ターミナル T5 に AA が T3 から引越しすることになりましたが、こちらは進んでいないようです。)

 

JFK - LHR という高収益路線で AA と BA はこのサービス共通化を成し遂げました。

 

会員サービスの共通化

時を遡れば、1997年にスターアライアンスが発足した時、加盟会社の上級会員を共通サービスで迎える仕組みが導入されました。上級会員制度では、スターアライアンスの場合、下からシルバーとゴールド会員があります。

 1999年 2番目に発足したワンワールドはこの点では進化しており、共通の会員制度は下からルビー、サファイア、エメラルドと三段階になりました。エメラルド会員の受ける特典は本来ファーストクラス用に展開されているサービスの一部なので、加盟のハードルは高くなったはずです。

 

通化された上級会員の基準は、だいたい

シルバーやルビー:年間25,000~30,000マイル

ゴールドやサファイア:年間50,000マイル

エメラルド:年間100,000マイル

で、各社の状況でいろいろな補正が行われていました。

 

会員制度はインフレに陥りやすいらしく、100,000マイルクラスより上のレベルを作っても会員が分布するようになりました。サービス展開の幅を広げようとするのは航空会社の本能のようなもの。上位レベルの会員資格が導入されます。

 

一方で連合内での共通化は25年前からほとんど変わりません。個別提携で自社会員に他社上位施設を使わせる程度のものです。ANAJFK の T7 で自社ダイヤモンド会員に BA のファーストクラス用ラウンジを使わせたのは良い例となります。

 

2022年に起きた変化は JV と密接に関係している点、JFK-LHRという注目路線で大々的に行った点で象徴的な出来事です。

 

各社会員レベルの比較

今回のサービス共通化で AA の Concierge Key と BA の GGL は「相当の会員レベル」と両社が考えていることがわかります。AA と BA、さらにはアメリカと欧州の各社の会員レベルの包括的な比較がやりやすくなりました。会員資格基準は各社で異なるので、複数の会社間で比較する場合、共通のスケールを用意して換算が必要です。ここでは年間100,000マイル相当の搭乗で維持する資格(=エメラルド会員レベル)に 100,000 という指数を与え、その会社の別の会員資格の維持条件を換算します。

 結果は以下のようになります。(クリックで拡大)

UA Global Services、DL 360、AA Concierge Key は招待制で基準は非公開ですが、最低でも年間 5万ドル以上の航空券購入が必要という情報から、大雑把に位置づけられます。

 こうすると分かりますが、JFKLHR の (1) のラウンジに招待される最上位の会員になるためには、古典的なスケールで年間 300,000 マイル相当の搭乗が必要です。さらにLufthansaAir France もこの数字を意識して Miles & More の改革、ultimate の基準化を行ったようにも見えます。

 

幅広い会員種別の維持は、サービスの幅が広いことを意味します。航空会社の能力が高いのです。その観点では JAL は欧米のメジャーキャリアから遅れています。会員数は BA の1千万に対して、JAL は3千万なのですから、できないはずはありません。他社は大雑把に言って JAL ダイヤモンド会員より上に

・200,000 ~ 330,000 FOP ぐらいのレベル

・150,000 FOP ぐらいのレベル

の2段階の会員レベルを持ちます。これらはJAL の課題でしょう。ANA は独立しているのかどうか曖昧ですが、少なくとも 150,000 PP のレベルに会員レベル、ダイヤモンド+moreを持ちます。

 

JAL 会員の感覚では、年間 300,000 FOP は途方もない基準だと拝察します。またこの基準だとオタク系の会員であふれる恐れもあります。そういう会員が悪いわけではありませんが、特定イメージと結びつくのはよくありません。

 最上級会員の導入に際して、その会員レベルだけ国際線ビジネス、ファーストクラスの利用による FOP のみで計算するとか、あるいは単純に支払金額基準にするとか新しい方法が考案されるかもしれません。

 

一方、JAL には JGC というサブスクリプションサービスがあり、その特典に JGP という会員資格があります。クレジットカード利用により上級会員資格に必要な搭乗要件を減免する制度は DL も AA も ANA も持ちますが、JGPの場合、会費だけでダイヤモンド会員の基準から20%オフ。特典も減らされるとはいえ、破格の扱いといってよいのではないでしょうか。こういう特徴は維持してもらいたいものです。