PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

中国南方と ITA

 

中国南方航空の行方

広州を本拠地とする中国南方航空 CZ は、4年前にスカイチームを去りました。同じスカイチーム加盟会社のデルタ航空 DL と中国東方航空 MU の提携強化が作用したと一般に信じられています。中華人民共和国には他に中国国際航空 CA がありますが、それはスターアライアンス加盟会社。すると CZ はワンワールドに接近するだろうと誰しも思うわけです。

 加盟は 4年間通奏低音のように噂されているものの、実現はしていません。ワンワールド創立メンバーのキャセイパシフィック CX の本拠地が香港なので、拒否権を発動するからとも言われてきました。広州と香港は 100 マイルしか離れておらず、「存在がかぶる」わけです。

 

昨年秋ぐらいから再び話は盛り上がってきています。いわく

・CZ は国際線路線網に比べ、国内線路線網が充実。CX は逆。

カタール航空 QRアメリカン航空 AA は CZ のステークホルダー(5%)

・ブリティッシュエアウェイズ BA と CZ は販売パートナー

・フィンエア AY と CZ は共同運航パートナー

ワンワールドは然るべき段階にならないと、何も述べることができない

・BA と AA は CZ 加盟に積極的

・CZ は公式には加盟申請を行っていない

 

フィジー航空のようにワンワールドコネクトとして参加する可能性もあるなどと述べる記事https://simpleflying.com/china-southern-airlines-may-join-oneworld-alliance/もあります。

 

いずれにしても想像の域を出ません。個人的にもっと有りそうだと思うのは、中国政府の関与です。CX を黙らせる、香港の利用を CX から CZ へ徐々に付け替える、CX を CZ の子会社化するなどいろいろな手段が取れます。一方でポスト COVID になり、英米と中国の国家間対立が強まっています。中国政府は香港が経済的な繁栄を維持しつつ中央政府に従順になることを望んでいるので、CX は飼い慣らすか、CZ の配下になることが望ましいのでしょうが、政策が直接的過ぎるとアメリカの制裁の口実を与えます。

 

CZ とワンワールドの関係は、国際的な緊張がらみで見ています。

 

ITA の株式取得はルフトハンザ

2週間ほど前にイタリア政府が発表したところによると、ITAの第一段階の株式売却でルフトハンザが優先権を得ており、60日の単独交渉に入るとのことです。

Privatisation ITA Airways : Rome et Lufthansa Group signent une lettre d'intention | Air Journal

ルフトハンザは今回40%の資本参加を目指しているとされています。

 

ルフトハンザはイタリアへどうしても勢力を拡大したいようです。2009年2月に運航開始した Lufthansa Italia は業績が振るわず、わずか2年後の2011年5月には撤退が決定し、同年10月に運航停止しています。

 赤字垂れ流しのアリタリアが無くなり、筋肉質に生まれ変わった ITA がイタリア市場を伴って売りに出るのですから、チャンス到来なわけです。順調にいけば、ルフトハンザ大ドイツ航空の下で、ITAは発展することができるでしょう。

 

しかし腑に落ちないことがあります。

 

[1] ITA の FFP の Volare は3年(延長されても最大5年)という年限が謳われています。

Faq - Frequently asked questions

つまり2024年10月15日にはプログラムは解散、一切のポイントが消滅します。

 

[2] ITA はアリタリアの商標を得ています。公式説明は「第三者に使わせないため」でした。なお ITA の IATA のコードはアリタリアの AZ を利用しています。

 

[3] ITA はスカイチームに加盟しているが、Volare がスカイチームで認識されないという状態は少なくとも2022年10月まで続いていました。この不具合はその後解消したのかどうか知りません。

 

[4] アリタリアは2021年10月5日に消滅しましたが、その FFP の MilleMiglia (会員数600万) は今でも利用できます。少々綱渡り的な感じで延命が図られています。

MilleMiglia di Alitalia continua: come richiedere i premi su Lastminute.com

スカイチーム内でも以前のようにマイルが貯まり、上級会員制も生きています。

 

この4点から考えると、ITA は非効率なアリタリアを消滅させる一方、フラッグキャリアを存続させるために経過措置で設けられた会社のようです。イタリア当局が描いたスキームは、外国資本への会社組織の売却と提携による生き残りでしょう。ルフトハンザの長年の野望と Volare のスカイチームへの消極的な現状を考えると、売却後の ITA はスターアライアンスに加盟しそうです。そして社名はアリタリアが復活、FFP は MilleMiglia が Volare を吸収するか、2プログラムが合併して新プログラムというオチではないでしょうか。