PECHEDENFERのブログ

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航空会社ステイタスは買う時代 (その 3), der die Zauberkappe trägt

 

新しい潮流により世の中が変動する時、破滅的な変化が見えにくい形で進行していることはよくあります。Zauberkappe (魔法の頭巾) を被っていて誰にも見えない悪ガキのようです。

 

ステイタスとは名前?

仮定の話をします。情報技術が発達し、受けられるサービスは会員番号だけで間違いなく受けられ、99%オンラインチェックインになりました。そしてルフトハンザグループが Miles & More 会員を対象に年会費 200 € のサービスを開始したとします。サービス内容は

・ウエイティングリストでの優先扱い

・スタンバイの優先対応

・預入手荷物の優先デリバリー

・受託手荷物1つ無料追加

・優先搭乗

・空港ラウンジ利用

・可能な空港で保安検査と入国審査の優先扱い

です。このサブスクリプションサービスがあるという理由で、Miles & More に入会しますか。これらのサービスが Miles & More の航空会社だけではなく、全てのスターアライアンス加盟会社で受けられるならどうでしょうか。

 

常識的にはフライトの頻度や利用キャビンクラスを考えて、これらのサブスクリプションを受けるかどうか検討するはずです。しかし現在の状況なら、申込殺到で収拾がつかなくなることは容易に想像できます。これらはスターアライアンスゴールド会員の特典と等価、つまり年200 €でゴールド会員資格が手に入るようなものだからです。エコノミークラスを利用しても受けられるオプションサービスを買っているだけなのですが。

 

それではこれらのサービスのうち 3つが無くて、航空会社には同程度の負担になるサービスが 3つ加わったらどうでしょうか。今度は常識が働いて、会員たちは冷静に検討すると思いませんか。

 

結局ステイタスとは特典の内容はともかく、呼称があり、特典と呼称が他から隔絶されること (排他性) が大前提なのです。特典購入としか理解できないシステムなら、魅力は激減します。排他性を失ったら、ステイタスは消滅を免れません。2020年代の見えにくい問題は、ステイタス会員の特典を「合理的な価格で」一般に販売するサブスクリプションサービスが興隆して、排他性が失われつつあることです。

 

ザ・カンタス倶楽部

この種のサブスクリプションを本格的に展開するなら、マイレージプログラムとは別に会員組織を持つことになります。JALJGC (来年から JAL Life Status プログラム)、ANASFC はまさにそれですが、これらはステイタスと認識するよう会社が仕向けています。問題となる典型例はカンタス航空 The Qantas Club でしょう。

The Qantas Club

カンタスエミレーツなどの提携航空会社のフライトで期間中特典が受けられます。皆さんが注目するラウンジも大抵のケースで利用可能、1名招待可能です。その他の特典には受託手荷物追加、アップグレード特典の利用、更新時に会費に応じた Frequent Flyer での Qantas Point 獲得などが含まれます。会員レベルはありません。外国居住だと安く (入会 99 AUD に加え、1年 450 AUD, 2年 825 AUD, 4年1,500 AUD) 、JGC /SFC と比較するなら、最初の修行が 99 AUD で済み、中レベルのクレジットカードを維持、ほとんど JAL /ANA搭乗する会員を想像すると近いと思います。オーストラリアに頻繁に行くなら「あり」な選択肢ではありませんか。

 

もし Status Credit run (カンタス修行) をしてまで Gold 会員のステイタスを保つなら、The Qantas Club の方が安上がり。特典内容もコンパクトですっきりしています。無理にステイタス維持をしていた会員は、たぶん移ります。新しいカンタスの利用者はさらに有望で、頻繁な搭乗を予想するならまず The Qantas Club に入会、Platinum 会員にいつも到達するほどなら、サブスクは止めるという選択をすることでしょう。

 そして The Qantas Club が好評を博しカンタスの収益の柱になるなら、年会費が高いオプションが用意されることでしょう。すると「Platinum 会員を無理して維持するより、The Qantas Club」という流れも起きます。修行が廃れる一方なことは見えています。

 

ステイタスの虚は呼称であり、実は優待サービスのセットです。Qantas の取り組みは一見ステイタスを金で買う話とはかけ離れていますが、ステイタスの呼称なしに実の部分を売っており、Frequent Flyer ステイタスの排他性を破壊します。大勢に気づかれないまま Status Credit run 文化に破滅的な効果をもたらすことでしょう。

 

結論

ステイタスを売る話は前2つの記事にまとめました。一方でステイタスの実である特典サービスはセットにしてサブスクリプションで売られています。ステイタスという制度はいろいろな角度から骨抜きが進んでいます。

 

こうなると旅行目的がステイタスポイント (資格マイル、XP、TP、SC etc.) である修行は、廃れていく他ありません。これに傾倒する人たち=修行僧たちも静かにならざるえませんが、よほど年齢が高くない限り、環境に適合することでしょう。修行が時代遅れになって困るのは、修行コンサルタントぐらいだと予想します。