PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

極端な多搭乗者

 

高頻度にフライトを利用する客は、そのまま Frequent Flyer と呼ばれるます。ご存じの通り、いろいろ話題に事欠かない人たちです。2009年のアメリカ映画 Up in the Air は Frequent Flyer のドラマでした。ただ La réalité depasse la fiction (事実は小説より奇なり)。極めつけはこういう人達でしょう。

 

日本でも紹介されたアメリカ人フライヤー

トライシーにも紹介されました。デルタ航空で生涯マイルが1,400万に到達した客が出現したとのことです。

デルタ航空、「1,400万マイラー」誕生 約30年間で達成 - TRAICY(トライシー)

約30年間かかったとのこと。年平均に直すと46万マイル程度となります。最近の100万マイルの搭乗は約1年半で行ったので、搭乗頻度は加速しているようです。

 デルタ航空の場合、MQM(Medallion Qualification Miles = 搭乗マイル × 積算率)で量られるので、高い航空券を買えば飛行した実距離自体はここまで大きくなりません。しかし積算率はせいぜい150%とか、200%。実搭乗距離が半分だったしても、大きな数です。

 

1,400万マイルは、誕生日の ZRH発 JFK行で超過。デルタ係員が JFK で祝うことになりました。ご本人はその後、同じ日の JFK発 ZRH行に搭乗したとのことです。このことは驚くに値しません。

Delta's Most Frequent Flyer Hits 14 Million Miles - One Mile at a Time

ちなみにデルタ航空JFK-ZRH 線を一日一往復しか運航していません。スケジュールは

DL53 ZRH13:30発ーJFK16:25着

DL52 JFK 20:35発―ZRH10:35着

です。JFK 滞在時間は定刻で 4時間10分。この日はいつもより忙しく過ごしたことでしょう。

 

上には上が:UAの23MM

ユナイテッド航空には、客として旅客機に搭乗した距離は世界一と目される人物がいます。Tom Stuker という方で、2,300 万マイルを2022年 7月に達成しました。

Tom Stuker: The Story Of The World's Most Frequent Flyer

12,000 フライトで達成。

 この人はユナイテッド航空史上初の 1,000 万マイラー。最初の19年で500万マイル、次の10年でその倍飛んだそうですから、この人も搭乗が加速しています。

 ビジネスの開始が搭乗の始まりで、それは80年代初期。1983年から Mileage Plus の会員ということです。しかし搭乗頻度が顕著に加速するようでは、39年間に2,300万マイルというレートは実体を表すことができません。

 

この方は 2020年 9月に2,200万マイルを達成しています。最近の100万マイルは22カ月で達成したことになります。

One Man Has Now Flown 22 Million Miles on United Airlines - View from the Wing

ユナイテッド航空のマイルは飛行実距離です。積算される数字はデルタ航空より小さくなる点には注意。凄まじい数字なのです。

 

実は Tom さん、昔からメディアの人気者。2009年12月には、本年の実績は70万マイルで(映画 Up in the Air の主人公)Ryan Bingham の倍などと書かれています。

United's Most Frequent Flyer: 700,000 Miles Per Year in the Air - View from the Wing

この記事によると、この時点でユナイテッド航空生涯マイルは 880万だったようです。

記録は現在でも更新中で、「伝説のトム」になることは間違いありません。

 

これからチャレンジする方へ可能性の考察

感覚がやや麻痺している界隈でも、実態は「100万マイラーは珍しくなく、200万マイラーは少数」。70万マイル/年、生涯搭乗実績2,300万マイルは驚くべき数字です。

 

Tom Stuker 氏ほどでなくても、年間 50万FOP、50万PP、10,000 TP 等の数字が記録できれば、SNS 等で注目されることでしょう。その倍ぐらい搭乗すれば、大手メディアで紹介されるかもしれません。

 この種のゲームに挑戦する気が起きた方々のために、年間の搭乗実距離はどこまで伸ばせるか試算してみました。

 

[1] 無着陸で飛行した場合

旅客機の巡航速度で移動し続ける以上の距離を超えることは物理的に不可能です。西風を利用して 1,000 km/hで飛び続ければ年間 876万 km、つまり年間 544万マイルになります。空中給油が必要です。軍事目的の試験ではないので、こんな距離は無理です。

 

[2] タッチで永遠に乗継ぐ場合

長距離のフライトは 500マイルが約 1時間です。大雑把な計算ですが、これで1年間過ごすと年間 438万マイルという数字が出てきます。この辺が完璧なスケジュールを組み、破綻なく実施した場合の上限値になります。

 

[3] 東京からの長距離路線スケジュールを利用

少し現実的な数字を出します。修行僧の皆さんになじみ深い「往復同一機材+タッチ」です。JAL のロンドン便が毎日 2往復あり、時間を有効活用できるのでかなりいい数字が出ると思います。

 

JL41:0010 HND発 0640 LHR着 +乗継 3h

JL42:0940 LHR発 0711 HND着(+1日)乗継 2h14

JL43:0925 HND発 1550 LHR着 乗継 3h30

JL44:1920 LHR発 1715 HND着(+2日)乗継 6h55

最初に戻る

 

このサイクルは 3日間で羽田―ロンドンを2往復。3日に一度地上で 7時間とれ、用事はここで済みます。現実的になりました。この場合の飛行距離は年間303万2,432マイルです。122サイクル完了、488フライト、HND-LHR 6,214マイルを仮定しました。

 

世界中を見渡せば、さらに効率よいスケジュールもあるでしょうが、日本発だとこの辺が上限になりそうです。乗継ぎが少ないのでイレギュラーが発生しにくく、実施率も高くなるはずです。

 

 

[4] 昼間は地上で活動して夜移動

羽田―シドニーは双方向に夜間移動できます。東京、シドニーの二都市を一日交代で10:00-19:00 の間活動できます。

 

QF26:2200 HND発 0850 SYD着 

QF25:2020 SYD発 0525 HND着  

 

この「ベッドは雲の上、毎晩宇宙線浴」を連続すると年間177万4,995マイル積算できます。この辺が社会活動に人並みの時間を割く場合の上限。

 

結論

現在の交通インフラを前提にすると、最大限搭乗しても搭乗距離は年間300万マイルがいいところ。年間70万マイル、生涯搭乗2300万マイルは途方もない世界です。