PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

リストラクチュアリング

 

確かに北米では、COVID 流行以前から料金値上げとサービス低下の兆しはありました。航空会社が提供する周辺サービスの話です。しかしそれが汎世界的になっていることが今では実感できます。以前のように旅行しようとすると、いろいろな壁にぶつかりますから。

 日本の場合、長らくデフレだったため、パンデミック以降の物価高は目立ち、加えて為替レートの低下、化石燃料の高騰を受け、サービスの核の部分、つまり運航・運輸でも大幅な価格高騰が見られます。サービスの核も周辺部もダメ。

 これだけ重なると旅行はつまらなくなり、別の楽しみを見つけた方がよい気がします。こんな時代だと、引越、転職、結婚などを機に習慣的な旅行をやめる方が多いことでしょう。

 

JAL カードショッピングマイル・プレミアム年会費値上げ

JAL カードでは 6月が有効期限である会員から、ショッピングマイル・プレミアムの年会費が値上げされています。それまで年間 3,300円でしたが、新料金は 4,950円です。よく見ると値上げ幅は 50%。大胆です。

JALカードショッピングマイル・プレミアム年会費改定のお知らせ

この特約をつけないと、クレジットカード 200円利用が 1マイル。航空会社のカードなのにマイルを貯める機能が弱すぎます。

 マイルの価格には様々な考え方があります。国内線で過予約が発生した時の振替協力金が「10,000 円または 7,500 マイル」なので、これが変換レートだとすると、特約の年会費をペイするには年間 3,713 マイル以上獲得する必要があります。すると年間のカード利用は37万1300円を超え、これは月々3万1千円の支払いになります。

 JAL マイルは 3年間有効な債権です。10,000 円=7,500 マイルはマイルをすぐ使う人のレートでしょう。普通に 1円=1マイルで評価するなら、年間49万5千円、月々4万2千円程度利用しなくては特約の元が取れません。私の場合 JAL カード利用は月4万円台で、クレジットカードの他の機能は全く使いません。毎年の初搭乗 500 マイルも獲得しません。したがってこの値上げを機にカードを止めるのが良いと結論しました。

 

ということで長年使ってきた JAL カードは解約します。

 

 

プログラムは選択と集中の時代

パンデミックにより、世界中で会員資格は 2年間延長されました。影響は2年に及んだという評価が定着しそうです。

 2年の停滞を奇貨として改悪したわけではないようですが、この間に航空会社の会員プログラムは変容しました。利益重視の観点で整理され、資格維持にはより多くの金が必要になりました。一方で会員特典(ラウンジ利用、手荷物預入、座席事前指定など)は、誰でも個別に購入可能になります。すると皆コストベネフィット解析(ペイするかどうかの計算)へ向かいます。そして利用頻度が高くないと、会員資格は効率が悪いことを意識します。そしてこれが一番大きなことだと思いますが、マイルにも会員特典にも夢がなくなりました。

 

北米大手の場合、航空券の金額基準を導入する前は 1K、エグゼクティブプラチナ、プラチナメダリオンを同時維持する人がかなりいたはずです。搭乗実績評価が距離ベースであり、常にセット販売される上位キャビンサービスのいくつかが利用できる時代には、メンバーシップのイメージは良く、実際に有用でした。支払金額で搭乗が評価されるなら、メンバーシップのコストは冷静に計算されます。さらに必要金額が数倍になる一方で、特典が一般に切り売りされるようになると、メンバーシップ維持が単なる無駄遣いに見えるのは自然な流れです。

 

欧州は北米ほど露骨ではありませんが、同じ傾向は明らかに認められます。日本はまだまだ古いタイプのプログラムで、サービス切り売りも控えめですが、支払金額がモノを言う制度は少しずつ導入されています。すでに導入済みの ANA カード利用による必要 PP の割引、来年1月の JAL の新ステイタスプログラムなどはその流れ。

会員資格の維持が高価になったし、個々の特典はサービス料金を計算できるしでは、魅力が失せるのは当たり前。プログラムは損得だけから検討されます。会員「ステイタス」に夢が無くなった以上、無闇に手を広げるのは損であり、利用プログラムは絞るしかありません。会社の視点からは、顧客囲い込みが起きます。皮肉にも規制が無くなる過程で、会員プログラムは本来の機能を回復するわけです。

 

自社会員の優遇

航空連合の成立や顧客プログラム共有により、世界中を澱みなく旅できるようになりました。会員サービスの共通化は重要な鍵です。しかしここのところ「振り子が元に戻る」現象、つまり脱共通化が見られます。

 フライングブルーでは Air Europa、Kenya Airways が脱退、Tarom、Air Calin の「除名」があり、今では Air France、KLM とその LCC である Transavia のプログラムだと公言されています。ANAJAL も、LH グループ、AF-KLM グループも最上級会員資格では自社(と同一傘下の会社の)便の利用だけが評価され、連合内提携会社の利用が関係なくなりました。

 

今後、この傾向は顕著になると思われます。デルタ航空では機内誌 SkyMagazine、ラウンジ SkyClub、会員プログラム SkyMiles、提携会社グループ SkyTeam という一貫性のある名称で周辺サービスが展開されますが、どの航空会社の会員もこの感覚で、航空連合を航空会社が提供する一つのサービスと思い込む傾向が強まることでしょう。

 今後は oneworld を意識してプログラムを選ぶより、利用するのは BA や CX、JL といった個々の航空会社であり、oneworld は各社が提供するオマケのサービスという意識が強まると思います。

 

自分自身も現状は手を広げ過ぎた感があります。近い将来、利用プログラムを整理します。