スターアライアンス、ワンワールド、スカイチームの三航空連合に関して利用者が最も気にすることは、
・利用する路線でのマイル獲得の可否
・連合内(で一応保証される)上級会員の特典
でしょう。マイル獲得に10年前の旨味はありません。特典もバラ売りが一般的になり10年前の輝きはありません。確かにそうですが、マイルの価値自体が明らかに減衰した一方で特典自体はほぼ完全に維持されています。
そして連合間に大きな差があるのが下位レベル会員ティアの特典。スターアライアンスでシルバー会員 (*S)、ワンワールドでルビー会員 (Ruby)、スカイチームでエリート会員 (EL) に分類されるティアです。加盟各社で年間 25,000~ 30,000 マイルの搭乗がその基準でしたが、連合の歴史も20年を超え、この獲得基準は意識できなくなってきています。
ただ相変わらず*S ー Ruby ー EL が対応することは明らかで、この三種会員の特典比較は意味があります。そして圧倒的に特典が充実しているのが EL、圧倒的に地味なのが*S です。後年に成立した航空連合の方が明確に優れていますが、新連合発足の目玉にしたかったのでしょう。
スカイチームエリート会員の特典
以下の比較の都合上、連合内共通会員ティアの説明を加えます。
ワンワールドで最上位に追加されたティアを除くと共通会員ティアは 2つ。下位ティアはすでに述べましたが、上位ティアはスターアライアンスでゴールド会員 (*G)、ワンワールドでサファイア会員 (Sapphire)、スカイチームでエリートプラス会員 (ELPL) です。これら上位ティアの獲得条件も似たり寄ったりですが、*G ー Sapphire ー ELPL の特典の差は*S ー Ruby ー EL の差よりはるかに小さいのです。
ELがどのぐらい優れているのか知るために、スターアライアンス*S と *G、スカイチーム EL の特典を比較してみましょう。
*S *G EL
ウエイティングリストでの優先扱い 〇 〇 〇
スタンバイの優先対応 〇 〇 〇
より大きい座席選択枠 × 〇 〇
優先チェックインカウンター設置 × 〇 〇
預入手荷物の優先デリバリー × 〇 ×
優先搭乗 × 〇 〇
無料手荷物預入枠の追加 × 〇 〇
空港ラウンジ利用 × 〇 ×
可能な空港で保安検査と入国審査の優先扱い × 〇 △(△:ELPL と大差)
〇は公表されているか、実際に広く行われているかを意味しますが、すべてが同じ水準というわけではありません。例えば ELPL も*Gと同様全て〇になり、〇が付く各項目では EL と同等かより適用の幅が拡大されます。しかし ELPL と*Gと比べた場合の優劣は分かりません。そうした比較の難しさを考慮しても、EL は「スターアライアンスの中に入ると*S より*G にはるかに近い」という評価が妥当です。しかも多くが日常的に利用できる特典。多くの EL 会員は平会員との差を実感しているはずです。容易な割にはお得なティアなのです。
余談ですが、ELPL 会員の特典には上記*Gの特典に加えて、
出発24時間前までなら満席便の正規運賃 Y 航空券の保証
が加わります。ただこの特典はどのぐらい享受可能なのか疑問です。特典利用の需要が高まるのは災害時や戦乱時であり、そんな場合に航空会社が対応しきれるとは思えません。
各社のスカイチームエリート会員特典
上記特典は連合内で共通して提供される会員特典です。言い換えると、加盟会社が連合内の会員すべてに最低限用意する特典です。利用者はどこかの加盟会社のプログラムの会員。そして各プログラム独自の特典は多いのです。つまりスカイチーム内でも会社により EL 会員ティアのお得度は大きく異なります。EL 会員に対する考え方自体がかなり異なるのです。
日本で利用しやすいプログラムは、AF-KLM flying blue、デルタ航空 SkyMiles、ベトナム航空 Lotusmiles、大韓航空 SKYPASS、中華航空 Dynasty Flyer などでしょう。このテーマについては別の機会にまとめます。
スカイチームエリート会員の獲得と維持(裏技編)
次の話題は EL 会員になるための方法です。実直に搭乗するのが正攻法ですが、ここではそれ以外の方法を主に紹介します。正攻法の資格基準も必要情報なので加えました。これらの基準は全スカイチーム便搭乗が対象です。
flying blue Silver:一年間に100 XP が要求されます。
(1) 仏蘭の提携 American Express の入会、更新で年間 15~60 XP 獲得できます。
(2) 航空券割引を主な特典とする有料サブスクで 20 XP 獲得できます。
(3) 搭乗フライトの SAF の負担により、多大な XP を単価 10 EUR/XP で獲得できます。
SkyMiles Silver:一年間に 45,000 MQM + 8,000 MQD が要求されます。
(1) 日本の提携 American Express 入会で獲得、年間100万円利用で維持できます。
(2) 米国の提携 American Express の年間 25,000 USD 利用で MQD は免除されます。
Lotusmiles Titanium: 15,000 mile または 20 搭乗が要求されます。
(1) 三井住友ベトナムエアラインズカード (年会費 5,500 円) に自動付帯。
Lotusmiles Gold:30,000 mile または 30 搭乗が要求されます。
(1) 三井住友ベトナムエアラインズゴールドカード (年会費 44,000 円) に自動付帯。
ベトナム航空では 2つの会員ティアがスカイチーム EL になります。ゴールド会員はベトナム航空を利用する限り、他社 ELPL よりはるかに特典が充実しています。(ベトナム国内に限らない) 空港ラウンジ利用も含まれます。
https://www.vietnamairlines.com/us/en/lotusmile/member-benefits/gold/gold-detail-popup
そのためスカイチームではベトナム航空の利用がほとんどという方なら、クレジットカードの付帯サービスのレベルは高いと思います。
日本ではスターアライアンス*G が ANA クレジットカード、ワンワールド Sapphire が JAL クレジットカード特典に付帯されます。そこで穴になるスカイチームの容易な会員ティア EL が*S, Rugy に比べて得であるという状況は喜ばしいものです。さらにベトナム航空のクレジットカードに入会すれば、*G, Sapphire, EL 会員を全て年会費で維持できます。(デルタ航空アメリカンエキスプレスゴールドカードに入会、年間150万円の消費をこのカードにつければ*G, Sapphire, ELPL 会員の維持も可能です。)3クレカを維持するといっても、年会費合計はアメックスのプラチナ会員より安くできます。日本ではこの種の出費をあまり気にしない方が多いので、比較的容易に三大連合の上級会員を保てます。
世界を見渡すと、上位会員特典が付帯するクレジットカードの年会費は一般に高額。「年会費を払っても有利な状態を保持していたい」という嗜好を持つ日本人はずいぶん恵まれた環境にいるわけです。SFC と JGC のおかげで、供給側の競争が激しいという見方もできます。
残念なことに JGC 制度は今年から新会員になる基準が変わりました。(ざっくり語って、搭乗期間不問で 6倍の搭乗量が必要になります。)JALは新しいビジネスモデルが必要だと判断したのでしょう。SFC も後に続くかもしれません。DL と VN のクレカ年会費も高額になる可能性があります。まあいずれもサブスクに過ぎないので、会員になるなら使い倒しましょう。