バス代わりの飛行機

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アメリカン航空のサービス廃止と3週間後の再開

一度引っ込め、3週間後に「再開」

アメリカン航空は、メインキャビン・エクストラという足元に余裕があるシートを座席指定追加料金 $20~ で提供しています。近年流行のエコノミークラス内での差別化と料金細分化の例ですが、フルサービスキャリアらしく抱き合わせ商品として企画しており、このシートを指定すると足元が広がる他に、

・グループ5の優先搭乗

・機内持ち込み荷物の無料化(小さな身の回りの手荷物+1つ)

・無料のスナックとドリンク

などが付いてきます。ただしこのサービスは、アメリカン航空アドバンテージの Executive Platinum、Platinum Pro、Platinum 会員およびワンワールドに加盟する全ての航空会社のエリート会員(サファイアとエメラルド会員)に無料、つまり追加料金なしで提供されていました。

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ところが今年の10月1日、アメリカン航空ワンワールドエリート会員を追加料金免除から除外しました。少々ケチ臭さを感じるものの、ここまでは改悪で済みます。しかし今回は特別な展開がありました。

 たった3週間で再度変更があり、BA、IB、AY、JL のサファイア、エメラルド会員は元通り予約時に追加料金なく座席指定ができるようになったのです。それら4社のルビー会員は(AAdvangage Gold 会員と同様に)出発24時間前に空席があれば無料指定が可能です。

 

なぜこんな不思議な処理を行ったのか、アメリカン航空からの説明はありません。ワンワールドの規約、契約から、特定の加盟会社のみを対象として会員特典を廃止するのは難しかったのでしょうか。

 

目立つ JV 重視

一つはっきりしていることがあります。これら4社は大西洋横断 JV (AAとBA, IB, AY)と太平洋横断 JV(AA と JL)を行っています。アメリカン航空は、JV の旅客の移動はスムーズにしたいという意図を持ち続けていたわけです。

 

他の連合や他の JV との競争を有利に進めていく上で、既存の資源を組み合わせて効率を上げるというよくある一手です。

 海の向こうの LHR でも飛行機がほとんど飛ばない今がチャンスとばかり、AA, JL, QR を BA 専用だったターミナル5に移し、大西洋 JV、ユーラシア横断 JVと、カンガルールートのコードシェア運航をスムーズに運営できるよう「大」改革が行われました。

ヒースロー Terminal 5 でのサービス向上 - バス代わりの飛行機

AY も LHR で Terminal 2 から移動するという事でしたが、いまだに動いていないようです。HEL も2つの JV のハブで、LHR にばかり客が集まり、HEL に閑古鳥が鳴くようになると JV が危うくなるから止めたのかもしれません。

 顧客に見える変化は、AAdvantage の Concierge Key 会員が The Concorde Room (CCR は閉鎖中なので、正確には代替ラウンジ)を利用できるようになった点です。そうなると JAL メタル会員の CCR 利用などの可能性について憶測を呼びますが、こんなハイエンドのエリート会員特典より多くの客が関係するサービスを充実させる方が効果的です。

 10月にアメリカンが行った奇妙なサービス廃止+再開は、まさにこの部分のサービス補強に合致します。

 

航空連合≠共通サービス

多頻度利用客へのサービスの共通化は、航空連合を支える一つの柱です。旅客がスムーズに世界中を旅行する上で効果的だからです。しかし3大航空連合も創設以来20年以上が経過し、基本理念の上でも修正が進められています。アメリカン航空が行った10月の奇妙なサービス変更は、ワンワールド内で不可避になっている航空会社の差別化を露骨に表しました。

 ワンワールド加盟のある航空会社の会員になれば、ワンワールド他社の利用では共通したサービスが待っていると思われがちですが、これは正しいとは言えません。よく知られる例では、BAのエリート会員搭乗時の Avios ボーナス。これは BA、AA、JL への搭乗時のみの特典です。この特典マイルのティアボーナスは、AAの場合は AA, AT, AY, BA, CX, IB, JL, MH, QF, QR, RJ が対象で、S7 と UL は含まれません。

 またマイル特典ではこうした違いが頻繁に見つかるというより、むしろ共通化が進んでいない状況。

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これらは航空会社が区別される例ですが、JV では会員が区別されます。航空連合内の会員の差別化は、今後さらに顕著になるでしょう。例えば空席待ちの優先は、シート指定より基本的な問題なので明確な差をつけるものと思われます。話題にならないだけで、もう行っているかもしれません。これは JV の滑らかな実施に関してかなり本質的な事柄です。

 こうした変化を見ているとJV には敏感にならざる得ません。近い将来、日本在住者に変化をもたらしそうな JV 関連の動きは以下の3点。

 

(1) 独禁法の適用除外を受け、2020年4月に開始すると発表されていた JL と MH との東京―クアラルンプール線 JV。一応7月に始動できたようです。

Japan Airlines and Malaysia Airlines commence Joint-Business - JAL International Flight

この2つの会社はだいぶ性格が違いますが、2社の会員への特別扱いはいろいろ可能だろうと思います。何をやっているのか、話題にならないのでよくわかりません。今は衛生対策に追われていて、新しいサービスを考えるような状況ではないと思います。

 

(2) スターアライアンス系ですが、ANA と SQ の東京―シンガポール線 JV は2020年 1月の終わりに締結が発表されました。今頃は独禁法除外を求めて各国当局者と必死の交渉中だったはずですが、おそらく棚上げになっています。

ALL NIPPON AIRWAYS AND SINGAPORE AIRLINES DEEPEN PARTNERSHIP WITH JOINT VENTURE AGREEMENT | Press Release | ANA Group Corp.'s Information

もっとも ANA のダイアモンド会員は、すでにエコノミー搭乗時に Silverkris ラウンジが使えるようになっており、彼らの関心事は決着済み。JV のことは忘れていると思います。

 

(3) 最後に AS のワンワールドへの加盟。加盟に先立ち、来春にも AA とは会員特典の相互乗り入れを開始する予定です。

Newsroom - American Airlines and Alaska Airlines Introduce Enhanced Offerings for Customers in 2021 - American Airlines Group, Inc.

将来的には太平洋横断 JV にも関与する可能性が高く、JL の「ご搭乗の多いお客様」は楽しみに待っていてよいのではないでしょうか。